なんと納豆!表現や慣用句のつかい方に要注意?

photo-ac.comより

10月15日に、筆者として11冊目の書籍『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)を上梓した。1週間で重版し2週間で3刷。予想以上に好評でおどろいている。

さて、読者の皆さまに次の例題を解いていただきたい。例題は納豆の製造方法について簡単に説明したものである。しかし間違った箇所がいくつかある。その箇所を正しく書き直してもらいたい。

--ここから--
お題:納豆の製造方法について

<例題>
一番最初に、よく蒸した大豆に麹を加えて発酵させてください。このとき適温で発酵させてください。適当な温度調整では発酵がすすみません。また、大豆を臼などで粗くひき、発酵させると「ひきわり納豆」になります。食指をそそられますね。

<修正>
最初に、よく蒸した大豆に麹を加えて発酵させてください。このとき、適温で発酵させてください。適当な温度でないと発酵がすすみません。また、大豆を臼などで粗くひき、発酵させると「ひきわり納豆」になります。食指が動きますね。
--ここまで--

それでは解説を加えたい。一番と最初は重言になるので「一番」を削除。例題では「適当」をいい加減という意味で使っている。本来は、きっちり当てはまるという意味になる。または、程度がほどよいなど。

食欲、興味が生じることを「食指をそそられる」と言いがちである。しかし正解は「食指が動く」。食欲や、興味が生じる際に動くのは指であり、指がそそられることはない。

慣用句は、習慣として長い間広く使われてきた言葉や言い回しのこと。誤用とされながらも既に一般化されているものが少なくない。すでに、一般化されているものは誤用とは言えないはずだが、この辺りは専門家でも見解がわかれているので扱いが難しい。

例えば、「ご自愛」という表現がある。「お体をご自愛ください」にすると重言で誤用になる。成果がでないとき「潮時だな」と表現すると限界が迫っている意味になる。しかし、本来は「一番いい時期」を指す言葉である。

「破天荒」は豪快で大胆な様子の意味で使われるが、本来は「今までできなかったことを成し遂げる」こと。「前人未到の境地切り開く」ことで褒め言葉になる。ほかにも、一般化された誤用はたくさんある。次回はこの辺りについても解説をしたい。

参考書籍
即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)

尾藤克之
コラムニスト