さて、読者の皆さまに次の例題を解いていただきたい。例題は納豆の製造方法について簡単に説明したものである。しかし間違った箇所がいくつかある。その箇所を正しく書き直してもらいたい。
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お題:納豆の製造方法について
<例題>
一番最初に、よく蒸した大豆に麹を加えて発酵させてください。このとき適温で発酵させてください。適当な温度調整では発酵がすすみません。また、大豆を臼などで粗くひき、発酵させると「ひきわり納豆」になります。食指をそそられますね。
<修正>
最初に、よく蒸した大豆に麹を加えて発酵させてください。このとき、適温で発酵させてください。適当な温度でないと発酵がすすみません。また、大豆を臼などで粗くひき、発酵させると「ひきわり納豆」になります。食指が動きますね。
--ここまで--
それでは解説を加えたい。一番と最初は重言になるので「一番」を削除。例題では「適当」をいい加減という意味で使っている。本来は、きっちり当てはまるという意味になる。または、程度がほどよいなど。
食欲、興味が生じることを「食指をそそられる」と言いがちである。しかし正解は「食指が動く」。食欲や、興味が生じる際に動くのは指であり、指がそそられることはない。
慣用句は、習慣として長い間広く使われてきた言葉や言い回しのこと。誤用とされながらも既に一般化されているものが少なくない。すでに、一般化されているものは誤用とは言えないはずだが、この辺りは専門家でも見解がわかれているので扱いが難しい。
例えば、「ご自愛」という表現がある。「お体をご自愛ください」にすると重言で誤用になる。成果がでないとき「潮時だな」と表現すると限界が迫っている意味になる。しかし、本来は「一番いい時期」を指す言葉である。
「破天荒」は豪快で大胆な様子の意味で使われるが、本来は「今までできなかったことを成し遂げる」こと。「前人未到の境地切り開く」ことで褒め言葉になる。ほかにも、一般化された誤用はたくさんある。次回はこの辺りについても解説をしたい。
参考書籍
『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)
尾藤克之
コラムニスト