小説家志望の人たちにオススメしたい「文章の技術」

尾藤 克之
明日香出版社
2018-10-15

 

アマゾンプライムビデオやNetflixという動画配信を観るようになって、「最初の掴み」がいかに重要かを、改めて実感するようになった。ひどいときには、最初の1分観ただけで、別のドラマや映画に変えてしまうこともある。

「最初の掴み」が感じられないからだ。

「最初の掴み」が大切なのは文章も同じだ。
尾藤克之氏の「文章の技術」(明日香出版社)によると、「最初の100字(レポート用紙で最初の3行)」で「読者の心にフック」が掛からないと読んでもらえないと書かれている。文章の世界では、動画配信よりも前から「(最初の)フック」が重視されていたのだ。

「フック」を掛ける際には、全体のストーリーと最後のメッセージを用意しておく必要があるとのことだ。
この点もドラマや映画と同じだ。

最初に出てくる「フック」が全体のストーリーとどのように結びつき、制作者がどのようなメッセージを伝えたいかに繋がらないと、「最初のあの場面は何だったんだ!」ということになってしまう。

「本書は物語の書き方なのか?」と思った方も多いと思う。
文章読本の類いは、谷崎潤一郎や三島由紀夫など著名小説家のものが有名だ。

しかし、本書の筆者はコラムニストであり小説家ではないし、全体として読めばコラムのような文章を書くことを前提としている。

おそらく、コラムのような文章にも、「物語」のような流れが必要だと筆者は言いたいのだろう。
現に、私たちが普段から目にしているエッセイやコラムも、物語のように起承転結があると強い説得力を感じる。

本書の読者の多くはビジネスパーソンや論文を書く学生たちだろう。
しかし、小説家志望の諸氏にこそ、私は本書をオススメしたい。

小説を我流のみで秀作を書くのは難しい。

かといって、「小説の書き方」の類いの本の多くは、文章の基本についてあまり触れていない。

現に、私自身、過去に10冊くらい読んだ経験があるが…。

小説を書いて行き詰まっている人たちは、本書を読んで文章の基本技術を学ぶのが近道だ。
おそらく、「小説の書き方」の類いの書籍を何冊も読むより、はるかに力が付くはずだ。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。