ローマ法王フランシスコが来年、日本を訪問する予定だ。バチカンを訪問した河野太郎外相は23日、ポール・リチャード・ギャラガー外務長官と会談し、フランシスコ法王が訪日を願っていることを受け、訪問の準備に乗り出すことで一致したという。実現すれば、1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶりとなる。
フランシスコ法王は聖職者になった頃、日本に宣教を希望したが、健康問題があって実現されずに終わった。フランシスコ法王は親日派で2014年1月に行われたサンピエトロ広場での一般謁見で中東からの巡礼信徒に対し、厳しい迫害にもかかわらず信仰を守り通した日本のキリシタンを例に挙げて励ました、という話が伝わっているほどだ。
安倍晋三首相は2014年にバチカンで法王と会談し、来日を招請。日本政府は法王に被爆地の広島・長崎を訪ねて被爆者のために祈祷を要請し、東日本大震災の被災地でも被災者に激励の声をかけてほしいとの希望を伝達したという。
フランシスコ法王は法王は就任以来、韓国(2014年8月)、フィリピンとスリランカ(2015年1月)などアジア諸国を訪問済みだ。フランシスコ法王の訪日が決まると、アジア周辺のカトリック信者が法王に謁見するために日本を巡礼するだろう。特に、中国、台湾、韓国、フィリピンなどから日本人信者を上回るカトリック信者たちが巡礼訪問すると予想される。中国の地下教会のカトリック信者たちが観光目的を装って日本入りすることも考えられる。バチカンと中国共産党政権は9月22日、司教の任命権問題で暫定合意実現したばかりだ。
ところで、日本にカトリック教の教えが伝来したのは西暦1549年。日本のカトリック信者数は約44万人(文化庁「宗教年鑑」平成29年版)と推定。新旧両教会の信者数を合わせても人口の1%に満たない。
故ヨハネ・パウロ2世の訪日(1981年2月23~26日)は約79時間の滞在時間だったが、日程は一杯で、後楽園球場で3万5000人の野外ミサ、武道館で約5000人の若者との集い、天皇陛下への表敬訪問、総理大臣との会談、超教派会合などのほか、広島と長崎でそれぞれ記念ミサが行われた。
なお、フランシスコ法王は昨年2月、キリシタン大名の一人、高山右近を福者に認定して、列福式が行われたばかりだ。今年6月には、バーレーンの首都マナマで開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第42回世界遺産委員会は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を世界文化遺産に登録決定。同月には大阪大司教区の大司教だった前田万葉師(69)が日本人としては6人目の枢機卿に選出された。2009年に亡くなった白柳誠一枢機卿以来の日本人枢機卿だ。そして来年の法王の訪日という具合に、日本カトリック教会にとって朗報が続いた。
フランシスコ法王の訪日日程は今後、バチカンと日本政府の間で煮詰めていくだろうが、被爆地の広島と長崎両市の訪問は間違いないだろう。ただし、高齢なフランシスコ法王(81)に余り多くのことを期待しないほうが無難かもしれない。
世界各地でカトリック聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、フランシスコ法王はその対応に苦慮している。欧米教会ではカトリック教会の信頼性は大きく揺れ、脱会者は増加し、聖職者不足は深刻だ。世界のカトリック教会を取り巻く環境は厳しいのだ。
フランシスコ法王の訪日を控えて懸念材料といえば、法王の安全問題と共に、日本カトリック教会内で聖職者の未成年者への性犯罪が発覚し、メディアに流れる場合だ。残念ながら、件数は別として、日本教会でも過去、聖職者の性犯罪は発生しているからだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。