また、連体修飾語を受けて使用される「形式名詞」があります。形式名詞は、直前の内容(状態、程度など)を名詞化できるので便利な単語です。しかし多用しすぎると、文章をぼやかして抽象化させてしまうおそれがあるため注意が必要です。ビジネス文書などの、実用的、実務的な文章での多用は控えたほうがいいでしょう。
A.仕事のことで話を伺いたいのですが
B.キャリアのことを計画することが楽しい
A.の場合は、「~について」に置き換えることができます。「仕事について話を伺いたいのですが」。B.の場合は、「こと」が連続しているのでしつこい印象を与えます。Bは、「です」で終わらせることができます。「キャリアのことを計画することが楽しいです」。このようにすればしつこさは感じません。
また、「です、だ、~である」で終わる文章の前には「の」を使用することはできません。「の」を使用すると、意味として通じなくなることがわかると思います。
・目標は優勝することです。 → 目標は優勝する(の)です。
・目標は優勝することだ。 → 目標は優勝する(の)だ。
・目標は優勝することである。 → 目標は優勝する(の)である。
逆に、知覚や感情の動き、自覚的な動詞の前では(の)が効力を発揮します。
・誰かが近づいてくる(の)を感じる。
・面接の順番が近づいてくる(の)を感じる
・イライラする(の)を感じる
パターンを覚えてしまえば難しくありません。正しくつかえるようになると便利です。
なお、拙著『即効!成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)は、発売2週間で3刷と好調です。応援していただいた皆さまに御礼申し上げます。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所・研究員
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