指揮権の発動を求めておられるというのは、ゴーン氏の起訴が必至なので、外交的ないし政治的配慮でゴーン氏を無罪放免して欲しい、という趣旨なのだろう。
指揮権発動などとんでもない、内閣も法務大臣も、政治的な配慮で司法権の執行を左右するようなことはしてはならない、というのが私の基本的立場なので、郷原氏の指揮権発動を促す件の一文には異を唱えておく。
市民革命を経験している国は、人権擁護の観点から、封建的な色彩が強い国家による司法権の行使についてかなり批判的で、特に刑事事件における司法手続きの在り方や刑の執行について基本的人権尊重の観点から異議を述べることが多い。
国際人権の観点からは、確かに日本の刑事司法が欧米諸国から批判を招き易いことは否定できないが、しかし、だからと言って日本の刑事司法が欧米諸国から著しく遅れている、とも言い難い。
取調べに弁護人の立会いを認めるべしというのは、方向性としてはそのとおりだと思うが、弁護人の立会い権が認められていないからその取調べは無効だ、とまでは言えない。
著名人だから、とか、日仏間に大きな亀裂を生じかねない重要人物だから、といった理由でゴーン氏を特別扱いをすることは、司法の公平性、公正らしさを大きく侵害しかねないから、私はあくまでゴーン氏に対しては日本の従来からの慣習に基づいて、淡々と手続きを進められるのがいいだろうと思っている。
少なくともゴーン氏の容疑について指揮権発動の余地はない、というのが私の見立てである。
うっかり安倍総理や官邸が指揮権発動まがいの動きをしてしまえば、必ず国民から批判される。
そういう危ないことは、一切されない方がいい。
念のため。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。