防衛産業終わりの始まり 当事者意識なき装備調達

<税を追う>支払い延期要請 防衛業界 戸惑い、反発(東京新聞)

「防衛省から話を聞いて社内でも『大変だ』となった」。防衛省が国内の防衛企業六十二社に求めた装備品代金の「支払い猶予」が業界に大きな波紋を広げている。「支払いを遅らせてくれ、というのはつらい」「我々にメリットはない」。企業側は戸惑いや反発を強めており、年末の予算案作成に向け、どれくらいの企業が応じるのか、先行きは見えない。 (「税を追う」取材班)

「防衛省から『今、厳しいからよろしくお願いします』という話があった。来年度に全部の後年度負担(兵器ローン)を支払えないから、少しでも額を減らしたいのだろう。防衛省は本当に切羽詰まっている」

支払い延期の要請を受けた防衛商社の幹部はそう証言する。十一月初めに防衛省で開かれた説明会は多数の企業関係者で埋め尽くされたという。

今回の企画、東京新聞力が入っております。ぼくも協力しております(笑
ぜひとも現役、退役自衛官、業界関係者、ドンドン情報をお寄せください。

皆さんのタレコミが防衛省、自衛隊、防衛産業を変えていきます。

さて年頭にこのブログで今年は防衛産業終わりの始まりだと予言しましたが、たいてい悪い予言ってのは当たるものです(笑

今回の最大の繰り延べ要請の最大の原因は安倍政権による対米政策です。

安倍政権はNSCと図り、対米追従のために巨額の装備調達を米国から行っております。
それがまだ役に立てばいいのですが、役に立たないどころかむしろ自衛隊を弱体化させています。

そもそも導入に先立ってまともに調査もトライアルもしていない。
AAV7なんてぼくが質問したら幕僚長が「アメリカに言われたので、3年の調査期間を半年に縮めましたと」悪びれずに会見で言っちゃうわけです。

AW609(Wikipedia:編集部)

でグローバルホークの競合がプレデター、オスプレイの競合がAW609。

頭がオカシイのか?レベルの話です。しかもぼくの会見での質問でグローバルホークに関しては、予算調達において、当時の小野寺大臣は「運用部隊は決まっておりません」オスプレイに関しては「中期防衛力整備計画では17機買うが、その後はわからない」と会見でいっておりました。

記者クラブの諸君がその後後追い取材をしていればこれらの胡乱な兵器の調達に歯止めがかかったかもしれません。ぜひ記者クラブは我々専門記者の加盟を認めるべきです。

さて、これら新兵器がナチス第三帝国同様に官邸から頭ごなしに押し付けられたわけですが、防衛省内の内局官僚が安倍首相のご機嫌を取り結ぶべく、阿り揉み手で官邸に接近して予算を通しました。

結果として海のUH-X、陸のUH-Xなどそれ以外の調達は安かろう、悪かろうでもいいとなり、不適当な装備の調達が画策されました。

のみならず、ただでさえ少ない整備予算、訓練予算が削られてきました。来年度は財務省がかなり手当をするようですが、それは長続きしないでしょう。米国製新兵器の調達&維持コストはそれだけ巨大です。

それは既存の装備の稼働率を下げるだけではありません。
飛行時間が減って、整備員の整備回数が減ればそれは搭乗員、整備員の技量の低下に繋がります。

そしてそれは事故を引き起こし、死傷者を生みます。更に民間人を巻き込む事故すらも起こします。
安倍政権やNSCの連中はそんな「些細なこと」には無関心でしょうが、これは極めて深刻です。

安倍晋三とその取り巻き、NSCが防衛費をアメリカにおもねるための飴玉代わりに使って、自衛隊を弱体化させているわけです。これが「日本を取り戻す」とか「戦後レジームからの脱却」とかいうやつらしいです。

野党も反対ばかりしてまともなデータや論拠を出さずに騒いでいるのでは与党はもとより、納税者を説得することも信頼を得ることもできません。事実に基づいた批判や代案をだすべきです。

更に申せば防衛記者クラブは我々専門記者を取材機会から排除してアクセスを独占しております。やっていることは当局との癒着であり、会見などで厳しい質問もしない馴れ合いをしています。これでは国民の知る権利を担保できません。

■本日の市ヶ谷の噂■
海自が調達する30FFMは富士通製コンピューターを約50台導入しているが、1台あたり約700万円で欧米競合他社よりもかなり高額。一隻分だと欧米競合他社よりも1億5千万ほど高いとの噂


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。