12月11日付け日本経済新聞の社会面に、「危険運転は不成立 東名あおり 弁護側改めて主張」という記事が掲載されていた。
同記事には、「…妨害行為を繰り返し、追い越し車線上に停止させた。約2分後に大型トラックが追突し…」と、書かれていた。
本事件について前回、「一般人の社会生活上の経験に照らして通常その行為からその結果が発生することが相当と認められる場合」に因果関係があると書いた。
これは、停車直後(またはそれと同視できる短時間で)衝突したことを前提として考えたものだ。
追い越し車線とはいえ、約2分も停車した後のトラックによる追突死と「煽り運転」との間に因果関係が、果たしてあると言えるのだろうか?
追い越し車線に車が停車していることは、高速道路であってもそれほど珍しいことではない。
それまでスムーズに走っていたのに、突然の渋滞でノロノロ運転になることは、高速道路ではよくあることだ。
約2分というのは、カップ麺が3分の2出来上がるくらいの時間で、相当の間がある。
後続トラックの運転者の前方不注視による、単純な追突事故と考えるのが自然かもしれない。
歩道のない一般道で、歩行者が危険運転で危ない目にあって、「危なかったな~。馬鹿野郎!」と怒鳴って1分経過した後、別の車にひかれた時でも危険運転致死傷罪が適用されるのか?
つまるところ、事故当時の事情が詳細にわからない限り、断片的な情報だけでは判断が困難と言うしかない。
ひとつ忘れてはならないことは、どんな悪質な行為をした者であっても、法によって裁かれなければならないという点だ。
感情論で裁いたのでは、前時代的な「私刑」になってしまう。
東名あおり事故で懲役23年求刑 遺族ら厳刑訴え https://t.co/VIaNVuEv1g
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2018年12月10日
私自身も、今まで何度か危険な「煽り運転」をされた経験があり、そのような行為をする人間に対して反感を抱いている。
だからといって、法治国家である以上、決して感情的な「私刑」はあってはならない。
何と言っても、日本は法治国家なのだから。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。