<税を追う>過去最大の補正、防衛省要求 「第二の財布」に巨額注ぐ
ぼくは東京新聞の取材チームにレクチャーするにあたって補正予算がキモだと指摘したのですが、彼らもそれは重要だと認識して執拗に報道しています。こういう形の報道をしてこそ新聞でしょう。
のし掛かる高額兵器購入のツケ-。防衛省が二〇一八年度の第二次補正予算で、過去最大規模の三千六百億円余りを要求していることが明らかになった。安倍政権になってから防衛費は毎年過去最高を記録しているが、米国製兵器の輸入拡大で、それでも足りない状況に。補正予算という「第二の財布」を膨らませ、巨額の税金を注ぎ込む構図が浮かび上がった。 (「税を追う」取材班)
…(略)….軍事ジャーナリストの清谷信一氏は「『リボ払い』の枠を増やそうという話で借金をさらに重ねるだけ。米国に貢ぐのが国防みたいな形になっている。金銭感覚を身に付けるほうが先だ」と指摘。「臨時国会が閉じたこのタイミングで、二次補正を編成するのは不健全だ」と批判している。
すでに何度もご案内しておりますが、本来補正予算とは、予算成立時に予測し得なかった支出を手当するものです。ところが東日本大震災以降防衛省は、本予算の別な財布として利用するようになりました。
つまり、防衛予算の実態は、
来年度防衛予算=来年度防衛省政府予算案+補正予算(−本当の補正予算)
となっています。ところがメディアの報道は得てして来年度防衛省政府予算案だけを「防衛予算」と報道してきました。
例えば来年度政府予算が5兆円でも、補正予算のお買い物予算が3千億円あれば実態は5兆3千億円になるのに「5兆円」として議論するわけですから間抜けなことこの上ない。
防衛費の予算のうち、人件費や基地対策費、米軍艦経費は概ね義務的な支出であり、大きく振れません。いわゆる装備品などのお買い物予算は概ね8千億円程度で推移してきました。
本年度の一時補正予算は概ね本来の意味の補正予算ですが、2次補正予算3600億円中、燃料費高騰に対す手当300億円ほど以外の3300億円はいわゆる「お買い物予算」であり「第二の防衛予算」です。
仮に本予算の装備調達費を8千億円とすると約1.4倍にもなります。
しかもその上、それでも足りずに国内メーカーに支払い繰り延べを依頼しています。
財政規律があったものではありません。
防衛予算に限らず安倍政権ではこのような補正予算を第二の予算として使うことによって、予算を実態以下に小さくみせかけて、税制肥大という批判をかわすための世論操作に利用しています。また、合わせて政府予算によってGDPを膨らましてあたかもアベノミクスがうまく回ってるかのように粉飾しています。
その尻馬に記者クラブメディアが意識するしないにかかわらず協力してきたことになります。
震災直後であれば、まだ政府支出で経済を下支えするという名目もあったでしょうが、第二次安倍政権ではその言い訳は使えないでしょう。何しろ御本尊がアベノミクスは大成功、と自画自賛しております。
補正予算の乱用は財政規律を見出し、また国会を軽視していることになります。
議会の監視が届かないということは、それは文民統制の否定に繋がります。官邸が手綱を握っているからいいのだと言う人もいるでしょうが、それはナチス第三帝国と同じでいいという主張であり、民主主義の否定です。
防衛費が高騰している要因は米国製兵器のFMS調達です。
ところがグローバルホーク、AAV7,オスプレイ、イージスアショアなど、大型案件は殆どまともなリサーチが行われず、官邸とNSC主導で導入が決定されました。これまたナチス第三帝国と同じです。総統閣下の思いつきで、国防軍に新兵器を押し付けたヒトラー総統そっくりです。そのうちに安倍首相は武装親衛隊まで編成するんじゃないでしょうか。
これらは自衛隊が欲したわけでなく、政権から押し付けられたものです。
しかも必要性が有るかどうかも怪しく、この巨額のFMSに圧迫されて、既存の装備の更新はもとより、装備の維持整備費や訓練費用が削られて、自衛隊の戦力は減退しています。
端的に申せば、防衛費で米国の軍需産業と国防総省に貢ぎ、自衛隊を弱体化されています。
これが安倍首相のいう「戦後レジームからの脱却」とか「日本を取り戻す」というヤツでしょうか。
■本日の市ヶ谷の噂■
プレス向けに防衛大綱、中期防衛力計画のレクチャーが予定されていたが、内容に一部自公合意文書にそぐわない部分があるとして、自称平和政党、実態は党内の党首選挙もなく、創価学会が党首を決め、選挙違反を指摘すると有権者を羽交い締めにする独裁政党の公明党が大騒ぎして、ドタキャンとなったとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。