だめな軍オタさんたちは事実が見えないお花畑な軍事音痴

さて、新しい防衛大綱、中期防が発表されました。
これに関してはおいおいのべてきますが、色々と自衛隊大好きな軍オタさんたちには残念な内容になっています。
彼らは自衛隊が大好きで、当局のいうことは全て正しい、現状は全て完璧だ、てな考えです。当然ながら、現状は常に問題があると指摘したぼくの主張は彼らには受け入れられません。

では近年どちらが正しかったでしょうか。

自衛隊大好きな人たちには現状がよく見えていない⁉︎(陸自サイトより:編集部)

○キヨタニの主張:護衛艦=駆逐艦というのはどんぶり勘定であり、海自は隻数が決まっているならば、運用を考えずに大きな艦をめざす。だから例えば、駆逐艦、フリゲート、コルベットに分けて、それぞれどのような任務を振り分けるかを明らかにすべき。
●軍オタさん達:防衛省、海自は正しい。全部護衛艦でいい。

☆現実:護衛艦にフリゲートである、FFMが追加され、更に次期大綱では1000トン程度の警備艦も追加される。

○キヨタニの主張:いずも級は火砲やミサイルなど駆逐艦の要件を満たしておらず、実質ヘリ空母であり、F-35の運用も潜在的に可能である。
●軍オタさんたちの主張:防衛省は正しい、いずもは護衛艦=駆逐艦。

☆現実:防衛省は相変わらず駆逐艦と強弁するも、いずも級を改良してF-35Bの運用能力を付加して事実上の軽空母化。

○キヨタニの主張:世界の趨勢では下車歩兵は40ミリグレネードランチャーを装備、06式小銃擲弾は時代遅れ。
●軍オタさんたちの主張:M203には欠陥もあった。陸自普通科に40ミリグレネードは不要。06式は正しい選択。

☆現実:陸自は次期小銃の仕様で、アンダーバレル式の40ミリグレネードランチャーを運用を要求。

○キヨタニの主張:世界では途上国を含めて装甲夜戦救急車を持つのが常識。装甲野戦救急車を持たない陸自は異常。
●軍オタさんたちの主張:陸自は独自の運用構想があり、装甲野戦救急車は必要ない。

☆現実:次期大綱ではわざわざ装甲野戦救急車の導入を明言。

○キヨタニの主張:陸自の個人衛生キット、特に国内用は極めて貧弱であり、改良の余地あり。
●軍オタさんたちの主張:陸自の個人衛生キットは問題ない。

☆現実:国会でもこれは問題になって、昨年の補正予算案で個人衛生キット増強に9億円がついた。

○キヨタニの主張:日本の機銃の能力、品質はライセンス生産品でも低い。
●軍オタさんたちの主張:機銃は品質に問題ない。

☆現実:品質、性能の長年の偽装がバレた。

○キヨタニの主張:日本の装甲車開発技術は低い。
●軍オタさんたちの主張:日本の装甲車開発技術は世界最高水準。

☆現実:コマツの新型8輪装甲車は性能、品質に劣り、調達中止。

○キヨタニの主張:自衛隊でも耐地雷装甲車が必要。
●軍オタさんたちの主張:自衛隊に耐地雷装甲車は必要ない。

☆現実:陸自は耐地装甲車、ブッシュマスターを導入。

○キヨタニの主張:空自のF-35AのFACOはコストが上がるだけで技術移転もなくコストが上がるだけ。輸入にすべき。
●軍オタさんたちの主張:FACOは利益がある。正しい選択だ。

☆次期大綱でF-35は今後輸入に変更。

○キヨタニの主張:US-2、P-1、C-2は世界では売れない。特に民間転用は耐える耐空、型式証明もとっていないので事実上不可能。
●軍オタさんたちの主張:優れた日本製軍用機は世界に売れる。

☆現実:未だに一機も売れず。

まあ、こんなもんでいいでしょう(笑

ぼくの主張してきたことは、さほど奇異なことではありません。
海外の専門誌(マニア誌でない)を何年か定期購読し、当局の発表を鵜呑みにせず、防衛予算には限度があり、優先順位をつける必要があることを理解できれば、さほど奇異に感じることはないかと思います。

自衛隊が大好き、国産兵器が大好きというアイドルと同じようなレベルの感覚で軍事を捉え、また盲目的に当局を信じるというメンタリティでは目が曇っていて、真実が見えません。

しかも理由もなく自分が軍事通だという強い自信があり、ぼくを含めてジャーナリストが調査報道した内容を、ネットの情報などを元に上から目線で否定します。

率直に申し上げて、こういう蒙昧な軍ヲタさんたちやマニアさんたちを説得しようという気持ちは全くありません。それはカルトの信者の洗脳を解くようなものですから、赤の他人に多大な労力を費やしてそこまでする義務はありません。

むしろ広く納税者に問題点をアピールすることこそがぼくの仕事だと思っています。
ですから東京新聞の「税を追う」のような企画にも協力しています。望月さんのいうことに、必ずしも賛成はしませんが、議論を起こすことが大事だと思っているから協力しています。頭の悪い軍オタよりも彼女の報道の方がよほど国益になっていると思います。

年頭に今年は防衛産業の終わりの始まりであり、今後防衛産業が生き残るためには「血と涙」、すなわち撤退や事業整理、廃業、倒産を伴うということです。それなしには防衛産業の未来はありません。

また同時に防衛省の意識改革も必要ですが、これは極めて難しいと言わざるを得ません。

個人的には現状のまま防衛予算を増やすのは、税金をドブに捨てることに等しく、むしろ4兆円ぐらいまで下げて予算の効率化を促し、その上で増額を検討すべきだと思います。

更に申せば、現在の安倍主張のNSC、官邸主導の自衛隊を頭越しに米国製装備調達決定というまるで、ナチスドイツ政権のような有り様は、国防を大きく歪めて自衛隊を弱体化させ、国防を危うくすると思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
10月にフィリピンでの演習で自衛官二名が交通事故で死傷したが、同演習で医官は派遣されておらず、治療は現地の病院任せ、C-130による搬送は検討すらさらず、事実上見殺し。この件は自民党の国防部会に報告もされず、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年12月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。