キューバとブラジルとの間で2013年から存在している医師派遣制度「Mais Médicos(もっと医師を)」を11月14日、キューバ政府は破棄することを決定。ブラジルで医療活動をしている8000人余りのキューバ人医師を極右のボルソナロが大統領に就任する来月1日までにキューバ政府は帰国させたいとした。
12月24日までには全医師を帰国させたいとキューバ政府は望んでいるようであるが、およそ2000人の医師がブラジルに留まる可能性が濃厚だと見られている。(参照:diariodecuba.com)
Hasta 2.000 galenos cubanos podrían quedarse en Brasil tras el final de Más Médicos https://t.co/OsyiWEpQKS | Diario de Cuba pic.twitter.com/EBmRWCA302
— Diario de Cuba (@diariodecuba) 2018年11月15日
12月13日の時点で、5853人の医師がキューバに帰国した。即ち、予測通り2000人余りの医師がブラジルに亡命を決めていることになる。(参照:diariodecuba.com)
11月下旬のキューバ政府が用意したそれぞれ200人余りが搭乗できる飛行機2機の内の1機は席が埋まらなくて空席のまま離陸したという場合もあったという。埋まらないというのは帰国医師と見込んでいた医師が亡命を決めたということである。
亡命することを決めたライモン・ガルシア(32)は取材に答えて次のように語ったという。「キューバの保健省の医療協力部の官僚が彼の母親を訪ねて母親に息子が戻って来るように説得を要請した」という。そうでなければ「息子さんと8年間会えなくなる」と言ったそうだ。
更に、彼は続けて「このミッションに参加した者の多くは若者だ。一部の者はもうすでに(ブラジル)で他の仕事を見つけている」と語り、「私も残る。沈黙していなければならないという鎖をほどく時が来た。私は政府の奴隷ではない。みすぼらしい給与、その一方で政府は給与の75%を分捕っている」と述べて、不公平にはもう我慢できないことを表明した。
ユスニエル・コルデロ(年齢不明)は残留することを容易に決心できたそうだ。彼は「誰も奴隷制度の中で生きる価値はない」と断定した。しかも、彼の夫人と娘はガイアナ共和国からブラジルに入国して既に彼と一緒に住んでいるそうだ。(参照:radiotelevisionmarti.com)
アリオスキー・ラミレス(36)は、「帰国しなればならないと私を脅迫して来た。そうしなければ、医師の資格を剥奪する」と迫ったという。「帰国してサトウキビで働くことには関心はない。彼らの脅迫で物事を率直に見ることができるようになった。それで残ることに決めた」と述べた。更に、「ここで自由の中で生活することを学んだ。キューバではそれが出来ない」と強調した。
彼によると、キューバでは7日間当直で働いて週給10ドル(1100円)にしかならないそうだ。それでブラジルだと月給として760ドル(84000円)稼げるというので、このミッションに加わったそうだ。(参照:voanoticias.com)
キューバでは一般の医師でも給与は凡そ60ユーロ(7800円)にしかならないという。
キューバ人医師の存在が顕著だったのは特に過疎地域で彼らが医療活動を実施していたことである。そこはブラジル人医師には関心が薄く避けようとする地域であった。そのような地域が700か所あるそうだ。
そのような地域で4年前から働いているマリア・ベレン(31)は「来た時は失望した。ブラジルはキューバの紙面で記者が語っていたような国ではなかったからだ。そこは余りにも貧困で、ブラジルの医師が行きたがらない地域なのだ」と語り、多くの人にはちゃんとした家がなく、麻薬を消費しているのには驚かされたそうだ。それでも2016年にブラジルの医師の資格を取得したので、ブラジルの医師と同じような報酬を稼ぐことができるようになっている。しかし、その一方で、キューバ政府にとって、彼女は亡命者ということで、医療ミッションで任務を終えても帰国することができなかったそうだ。(参照:elpais.com)
キューバ政府が医師を引き揚げると発表してから3日後にはブラジルの保健省はキューバ人の医師が抜けた後の補充を92%済ませたと発表した。しかし、それは机上での補充ができたということであって、実際にブラジルの医師が派遣されたのではない。
事態はキューバ人医師を亡命者として認めると発言しているボルソナロが1月1日に大統領に就任してから順次明確にされて行くことであろう。(参照:radiotelevisionmarti.com)