日産経営陣の全面協力で、検察は十分な証拠を保有しているはず

あくまでゴーン氏に係る刑事裁判に関してのことだが、検察当局には何の証拠もないようなことを仰っているが、日産の経営陣が全面的に捜査に協力し、専門家を交えて何か月間も内部調査を続けたうえでの告発等が検察捜査の端緒のようだから、検察当局には何の証拠もないはずだ、などという批判はまず当たらない。

日産サイト、Wikipediaより:編集部

少なくとも日産にある財務関係の帳票関係書類や稟議書、関係者間のメール等による通信記録等金融商品取引法違反や特別背任を事実上推認させる程度の客観的資料はすべて検察当局が保有している、と見た方がいい。

政治資金規正法違反や贈収賄の容疑で企業や政治家の事務所が捜査当局による強制捜査を受けることがあるが、そういう事件の場合は、大体は容疑者と目されている企業や政治家の事務所は一般的に捜査に非協力的で、時には重要な書類が破棄されたり、隠匿されたり、改竄されたりなどということがある。

しかし、日産の事件については、先に述べたとおり会社側が捜査に全面的に協力しているようなので、通常は捜査当局が入手し難いような証拠まで検察当局は既に入手している、と見ておかれた方がいい。

勿論海外に在住している関係者からの事情聴取は済んでいないだろうから、公判が始まってからの展開までは予想できないが、日本にいる日産の関係者からは存分に事情聴取が出来、また証人として法廷に呼ぶことも出来るだろうから、検察当局が何の立証も出来ないということにはならないはずである。

いくらゴーン氏が世界の様々な国々に強力な弁護団を擁していても、関係証拠が日本の国内にあり、関係証人の殆ども日本国内にいるということであれば、検察当局が公判を維持することにそう窮することはないはずである。

EU圏内に居住されていてEUでのマスコミの報道ぶりから、日本の検察に対して相当の不信感と不安感をお持ちのようだが、多分、そこまで心配される必要はないはずだ。

今は、検察当局の捜査の進展を黙って見守っておられるくらいでいいのではないだろうか。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。