間もなく2018年が終わろうとしている中、年末年始に「旅行へ行きたい」、「恋人とすごしたい」、「急用ができた」など介護から少し離れたいと思ったものの、在宅介護をしている人たちも少なくないだろう。
筆者は30歳過ぎから認知症祖母を6年間在宅介護、11月末から介護老人保健施設(老健)で施設介護を経験しているが、年末年始を何度か在宅介護していた。
そのうち一度だけ39℃近く発熱しながら介護をしたことも…。
しかし、介護者が急病やケガをした際や仕事や旅行などプライベートでもある程度介護サービス利用のコツをつかめば休みながら介護することが可能になることもある。
6年間お世話になったケアマネジャーや介護職員の方々のアドバイスももりこみながら書いているので参考にしてもらいたい。
「年末年始利用の施設予約は2ヵ月前からスタート」
介護サービスは午前から夕方ぐらいまでを施設ですごすデイサービスやデイケア、終日を施設ですごすショートステイなどがある。
年末年始は施設予約が殺到し争奪戦となる。
介護をするようになると毎月ケアマネジャーと次月の介護施設利用計画を決めるが、年末年始は1ヵ月前倒し。
「年末年始の予定はどうされますか?ご旅行に行かれるとか、お仕事とかございますか?一応希望曜日は施設にお伝えしますがその通りにならないこともございますのでご了承ください」
と、ケアマネジャーにサラリと告げられる。
「えっ?まだ10月初めなのにもう予定決めないといけないの?」と介護した当初は驚いたが…。
希望曜日がとれなかった場合、年末年始も介護者は介護三昧の日々となるので、介護から少し離れたい、ゆっくりしたい人は10月初めには予定を決めておいて損はない。
また、予約はとれなくてもキャンセル待ちをしている施設は多いので、希望曜日・時間を伝えておくといい。
実際、周囲で介護中の人をみると 偶然当日キャンセルが出て緊急性が高いということもあり3泊4日みてもらったり、日中デイサービスを利用できた人もいるので。
「病気やケガでどうしても介護できない場合の対処法」
筆者は在宅介護6年間で1度だけ年末にカゼをひき39℃近く発熱し咳もひどかったので、ケアマネジャーに連絡した。
ところが全然つながらない…。
ケアマネジャーが在籍している会社も全員年末年始休暇に突入していた。
なので、祖母を一人にできず一緒に病院へ行き帰宅。
そして、「ちょっと助けてしんどい倒れそう」と母親にヘルプ。
周囲からは「母親は実の娘だろ、看るのが当たり前だろ」というふうに言われたが、母親と祖母がうまくいっているなら筆者はそこまで介護に介入していないだろうと思いながら…。
母親が急遽自宅に来て、祖母のご飯、洗濯、買い物、オムツ替えなどを介助した。
このドタバタ劇に祖母は「シンゴ、無理したらダメだよ。病院に入らなくていいんかいな?私手伝うよ」と歩行がフラフラした祖母を逆に心配させてしまう始末。
しかも、筆者が寝こんでいると「シンゴくん、全部洗っといたからね」と祖母が晩ご飯の洗い物を全て済ませていてくれ…。
「ばあちゃん、すまんなあ、おおきに」とお礼を言うと、「いいんだよ、しんどい時は寝とかないとね」と笑いながら床につく祖母。
どっちが介護されてるんだか…。
後日、ケアマネージャーから「ご案内がもれていてすいません、年末年始にそのように急にご体調を崩された場合は施設に直接連絡してもらえれば」とのアドバイス。
筆者のようなドタバタにならないよう、まずは体調管理を万全にするのはもちろんのこと、普段からお世話になっているショートステイやお泊りデイサービスなど介護施設に直接連絡し相談するのが一番の近道と言えそうだ。
「一ヵ所でいいから常連施設の確保を」
「お客様QRコードのこの部分をご覧いただくとジュース一杯が無料になります」。
先日週1回は行くある飲食店で多くの客がいる中、店長が筆者だけにコッソリ教えてくれ嬉しかったが、介護施設も1ヵ所でいいので常連施設を確保しておきたい。
祖母はお泊まりデイサービスの職員を気に入り週2回お泊まり、週1回デイサービスと週3回ペースで約4年間利用。
祖母、筆者・母親、施設職員とすっかり常連となり信頼関係が構築され、年末年始の他ゴールデンウィーク、夏休みなど大型連休、私や母親が急病の時、当日に電話してもOKしてくれることが多かった。
そのおかげで家族が年に何度か勢ぞろいすることができ、祖母と一緒に年末年始は毎年のように家族が揃いおせち料理を食べ初詣に行ったり、国内旅行に行ったり、食事にでかけたりすることができた。
だから、1カ所常連の施設を確保しておくことは重要。
年末年始を上手に介護サービスを利用しながらすごすのは意外に難しいことがお分かりいただけたと思う。
ただ、コツさえつかんでしまえば忘年会で仲間と飲んだり、海外旅行へ行ったり、おせち料理を食べたり、恋人とすごしたりと介護をしていない人と同じような生活が送れます。
「あけましておめでとうございます、私はもうそれほど長くはないと思いますが、生きれるだけ生きますので皆さんご協力お願いします」
お正月の祖母の挨拶で笑いが起こるような正月が毎年すごせていたように。
奥村 シンゴ フリーライター
大学卒業後、大手上場一部企業で営業や顧客対応などの業務を経験し、32歳から家族の介護で離職。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディアのテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。