私の携帯はアップルです。カナダで使っている機種が古くなったらシムフリーなのでそれを日本に持っていき、日本で契約している格安携帯会社のシムに入れ替えて日本用の携帯電話として使っています。スマホのライフとしては6-7年はあるでしょう。では日本で使う古いスマホとカナダの比較的新しいスマホで性能に差があるか、といえば細かいことを別にすればまず何も不自由しない、と申し上げておきます。
スマホはコモディティ化すると何度も申し上げてきました。上記の例はコモディティとしての好例ではないでしょうか?
スマホが進化過程にあった時、あっちが良いか、こっちがよいか、悩んだ時期もあります。各メーカー、様々な技術革新で薄くなり、大きくなり、電池の持ちがよくなり、画面がきれいになり…という発展をしてきたのですが、今や、各メーカーの差が少なくなってきたこと、消費者の要求と売り手の新製品に対する「押し付け」にギャップが生まれたことは無視できない事実かと思います。
アップル社の新型スマホに「高い」というコメントを寄せられた方が多くいました。家電量販店で何でもいいからスマホといえば1万円台から4-5万円の商品が並びます。そこからするとアップルのXRが9-10万円は数倍の価格帯となり、コモディティにそこまでのプラスアルファを払うのか、ということになります。
例えばノートパソコンは今、家電量販店で最も安い機種であれば5万円台で購入できます。もちろん、10数万円する機種とは違う、と販売員は説明するのですが、一般ユーザーであれば2倍以上の価格差の差異を感じるのは案外難しいでしょう。
世の中にはプレミアム料金があります。基本機能プラスアルファの部分において「品質が良い」「サービスの差別化がある」「普段味わえないプラス感がある」「自慢できる」などの違いを明白に感じるときであります。
このプレミアム料金の比較を最もしやすい一例が鉄道の普通席とグリーン車でしょうか。例えば東京から新大阪までの普通車とグリーン車の価格差は約5000円で普通車より35%ほど高い程度です。ちなみに外国人や海外移住者が購入できるジャパンレールパスも普通車とグリーン車の価格差は35%程度です。
飛行機になるとこのプレミアム価格差は2-3倍に拡大します。搭乗時間が長く、付加されるサービスもグリーン車とは違い、食事やアテンダントの目の届き方などプレミアムの範疇が増えるからでしょうか?
では製品になるとどうでしょうか?レクサスESが昨年日本でも発売になりましたが、北米ではもともとカムリの高級版という位置づけでした。わたしもかつて乗っていました。単純比較は難しいのは分かっていますが、敢えてするならこの価格差はレクサスがカムリの70%程度増しとなります。
このような比較をしていくときっと面白い分析ができるのだろうと思います。結論的にはアップルの価格戦略は強気すぎたように感じます。プレミアム感をどうやって表現するのか、そこが消費者にきちんと伝わっていない気がします。ハードで差異がつけられないならソフトで対抗するなど方法はあると思いますが、Siriもいまいち、マップもいまいちとなればアップルでグーグルを使わざるを得ないことになり、アップルの顧客囲い込みは失敗しているということになります。
アップルショックでもう一つ加えておかねばならないのは同社が一本足経営に近い点でしょうか?ティム クック氏は優秀ですが、彼は天才肌ではなく秀才肌。スティーブ ジョブズのようなイマジネーションは出てきません。ここを変えないとアップルの凋落が止まらなくなる気がします。
優等生集団と化すのではなく、ハッとする切り替えができないと作り上げた地位に胡坐をかき続けることはできないのであります。厳しい世の中です。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月7日の記事より転載させていただきました。