東アジアでいろいろな動きが出てきました。金正恩委員長が中国に4度目の訪問をし、習近平国家主席と会談をしました。一方、中国、北京ではアメリカと貿易問題を協議する次官級会談が行われ、一日延長しながらも一定の成果が出ているようです。
そんな中、日本と韓国の関係は悪化の一途をたどっており、徴用工問題では日本政府がいよいよ踏み込んだ交渉を韓国側に求めています。レーザー照射問題は政府間が双方、一歩も譲らないバトルとなっています。
東アジアの勢力地図はどう塗り替わるのでしょうか?
まず、金正恩氏の訪中ですが、金氏からトランプ氏に送った親書、それを受けて「さほど遠くないうちに二度目の会談の場所を…」と述べるトランプ大統領の発言を受けて、米朝首脳会談の下準備に動いたとみる向きが強いようです。
ただ、アメリカと北朝鮮で事前交渉が進んでいないようですし、ポンペオ国務長官の北朝鮮に関するニュースもこのところありません。トランプ大統領が事前交渉を経ずして首脳会談に臨むことはないと思われ、トランプ大統領の「近いうちに」はかなり幅があるように感じます。外交的にはアメリカは中国との貿易問題を解決する方が先決で、北朝鮮問題に一刻を争う理由はないとみられます。
よって3月1日までの米中貿易問題交渉の結果を踏まえ、金正恩氏との会談に展開するのではないかと思います。私は二度目の会談はあっても4月以降ではないかと察します。ただ、会談をするということは一定の問題解決を模索するということですし、トランプ大統領の性格からすれば「必ず成果を上げる」前提に立ちますので会談後、何らかのメリットが北朝鮮に生まれる可能性はあるでしょう。
そのメリットを享受するのは地政学的にも歴史的関係からしても中国以外にあり得ないと考えています。
では、それを前提で北朝鮮は韓国とどう取引するでしょうか?朝鮮半島の歴史からすれば北朝鮮が優位に立っている中で中国からの支援を取り付けたなら韓国は配下ぐらいの感覚で接することはあり得ます。文大統領はさらに北にすり寄る姿勢を見せていますので攻守逆転はたやすい状態になります。
その韓国には米軍が撤退カードをちらちらと見せ、中国はそっけなく、日本とも関係を悪化させる中、最後にババをつかむシナリオも出てきました。
韓国は高い経済成長を遂げてきたとされますが、それは昔の話で近年は成熟化する日本の成長率に近づき、昨年は年3%を切る水準まで落ち込みそうです。また8日に発表されたサムスン電子の10-12月決算見込みが極めて悪く、営業利益は29%ダウン、中国に於けるスマホ市場占有率は1%以下で半導体、スマホ事業の双方が悪化しています。
もともと国内経済環境が悪化している中、サムスンは韓国経済の10数%を占めるとまで言われる企業であります。(かつては2割だったのに下がってきてます。)同社の不振は韓国経済にメンタル面での影響も大きく、国民のストレスのはけ口が日本への対抗意識や北朝鮮との終戦等への期待とつながりやすくなります。つまり、逆説的ですが、経済が悪化すればするほど、文大統領への北朝鮮との交渉期待は高まることになります。
ただし、韓国の国民性からすれば何らかの平和交渉が成立した後、ふと我が身を振り返り、「なんでこんな条件を飲んだのだ」と政府をバッシングする流れは予想できます。こう見ると韓国をめぐる問題が北朝鮮問題の後に浮上する、と予想することも可能ではないでしょうか?
では最後にそんな東アジア外交の荒波の中、日本はどうするのか、ですが、今は独立独歩でよいと思います。アメリカとの同盟関係はしっかり持ちながら、中国とも雪解けを維持し、まずはコトの流れを見届けるべきかと思います。対韓国の様々な問題は日本の姿勢を強く打ち出し、国際世論をうまく巻き込むことが重要かと思います。海外からはあの二つの国は仲が悪いという第三者的視点しかないので日本が理路整然と問題に立ち向かう姿勢をつらぬくことが重要かと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月10日の記事より転載させていただきました。