カンボジアの今とIT事情③人材育成

カンボジアでのIT人材の育成はどうなっているのか。学生のスタートアップに関する意識はどうなっているのか。プノンペン大学の構内にあるカンボジア日本人材開発センター(CJCC)、プノンペン空港から車で3時間キリロム国立公園にあるキリロム工科大学に訪問してきました。

CJCCはカンボジアと日本の相互理解を強化して、新興企業や中小企業の為のビジネスソリューションやネットワーキングづくりを推進するためにつくられた日本政府出資の拠点です。日本語教育講座、日本のビジネスマナー講座、日本文化講座などが開かれています。ここは、IT人材の育成に特化しているわけではありませんが、日本人と共にビジネスが出来るコミュニケーション力、マナーを手に入れるために効力を発揮しています。

CJCCが設置されているプノンペン大学は、今まさに「TECHO STARTUP CENTER」(上記写真)という施設を整備している最中という。また、CJCCで、プノンペン大学学生ビジネスアイデアコンテストも開催されている。日本でこうしたビジネスコンテストを行うと今やITを活用してのビジネスモデルが多いのですが、カンボジアではIT活用モデルでないものも多数提案されています。

IT以外のビジネスモデルも、逆にITを使うことによって更に大きなチャンスを手に入れることが出来るというモデルを思いつかない場合、あるいはITインフラがないからどうにもならないという場合もあるかもしれません。僕が客員教授を務める多摩大学で、こうしたIOT分野での協力が、出来ると思います。

キリロム工科大学は、プノンペン市内から車に揺られて約4時間のキリロム国立公園にあります。キリロム工科大学は、実は東京工業大学出身の猪塚武という日本人が経営をしているのです。東京渋谷に日本の窓口があり、カンボジアに行く前に東京に戻っていた猪塚さんに会って、キリロム工科大学に関するある種の座学は済ませていました。大学の経営モデルは、リゾート開発・運営との一体経営、企業スポンサー制度、学校施設への投資モデルで成り立っています。

キリロム工科大学は、IT人材を育成する全寮制の大学で、カンボジア人は無料です。昨年は、1期生(22人)が卒業し、70%が日本企業に就職。また日本人学生も10人入学してきたそうです。多くの卒業生は、スポンサーをしている日本企業に結果的に就職しています。

学校周辺部は何もない国立公園、そして学生寮、校舎もリゾート地内なので勉強する以外にすることが無い環境におかれています。授業は英語。母国語のカンボジア語と英語は流暢に、そして日本語も少し。1人1台、PCが与えられ、学校の課題、グループ研究、企業インターンとしてのビジネスサポート等、授業以外にも自分への将来の投資として時間と労力を使っています。

大学自体がベンチャー企業も経営していて、リゾート運営に必要なLAN整備システムや予約サイト、これらも学生がつくり、実践によるケーススタディにもなっています。システム理論とビジネスでの実践、課題解決の手法とグループでのチーム作業、ITの世界で活躍する上で必要な能力を蓄えて卒業していくのです。キリロム工科大学は、スポンサー企業と大学との関係という意味において、新たなモデルを構築しています。

僕も特別授業の依頼を受け、議員立法としてつくった「官民データ活用推進基本法」についての講義を行いました。データが如何に経済をつくるか、その為には何を準備していかなくてはならないか、データを取り扱うための必要な知識とは何か、という内容にしました。

多摩大学では大学院の客員教授として、社会人を相手にした小人数の授業を担っています。他大学で時々、学部生相手の授業を行いますが、学生のやる気を感じることは、ほぼありません。しかし、キリロムの学生は目が光り輝き、真剣に何を得てやろうという思いが伝わってくるのです。ここでは当たり前の様ですが、生徒が100人くらいいて、聞いてない人がいないのです。

本来は、これが世界の大学のスタンダードで、日本の多くの大学がスタンダードでないということなのかもしれません。

IT人材を育成するというのは、どういう事なのだろうか、改めて考える機会になりました。都市部にある立派な校舎、文科系学部、周辺の遊び場、サークル活動、アルバイト。日本の学校は本当に将来の人材を育成出来ているとは思えないのです。

つまり、市場(マーケット)に必要とされているもの・サービス(人材)が提供出来ていなければ、企業(学校)がおかしくなり、日本経済が悪くなるという事です。日本で出来なければ、カンボジアで育てれば良いということになるだけですが…。ある意味、キリロム工科大学の挑戦は、日本の教育改革なのかもしれません。


編集部より:この記事は元内閣府副大臣、前衆議院議員、福田峰之氏のブログ 2019年1月13日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。