東欧で“ファーウェイ締め出し”拡大

長谷川 良

米国を皮切りに、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本らの政府が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)社製品を政府調達から排除することを相続いて決定したが、“ファーウェイ締め出し”の動きは東欧にも拡大、チェコのアンドレイ・バビシュ首相は昨年12月18日、内閣の職員に対して、ファーウェイ製スマートフォンの使用を禁止した。東欧では初めて。その理由は「中国のファーウェイと通信大手の中興通訊(ZTE)のハードウェアやソフトウェアを使用すると、セキュリティ上の問題がある」というのだ。

ファーウェイが業界最高性能の7nmプロセスのARMベースCPU「Kunpeng920」を発表(2019年1月9日、中国・深圳の記者会見で、ファーウェイ社公式サイトから)

今年に入ると、ポーランドで8日、ワルシャワのファーウェイ社事務所の中国人職員がスパイ容疑で逮捕された。同職員はポーランド担当営業マネージャーだ。同時に、ポーランド国内安全保障局(ABW)に勤務していた元職員(サイバー対策専門家)も逮捕さている。

ワルシャワではファーウェイ製品への警戒も高まってきた。オーストリア代表紙プレッセ(1月14日付)によれば、「ポーランド政府はEU(欧州連合)とNATO(北大西洋条約機構)加盟国に対しファーウエイ対策で共同歩調を取るべきだと呼びかけた」という。

ファーウェイは現在、世界170カ国でビジネスを展開させているが、東欧ではチェコ、ポーランドのほか、エストニア、ラドビア、バルト海などに事務所を開設している。今後、他の東欧国でもファーウェイ締め出しの動きが広がる可能性がある。

ファーウエイ締め出しの最初の動きは米国の要請を受けたカナダ検察が昨年12月1日、任正非CEOの娘である孟晩舟・財務財務責任者(CFO)をイラン制裁違反で逮捕したことからだ。米国はファーウェイが米国の国家安全保障上の脅威となると判断し、警戒してきた。具体的には、ファーウェイが2020年に実用化を計画している5G(第5世代移動通信システム)の覇権だ。ちなみに、ファーウェイは5G関連特許の10%を既に獲得済みだ。

通信情報世界では5G時代を迎えるという。現在の4G(LTE)よりも超高速、超大容量、超大量接続、超低遅延が実現する。本格的なIoT(物のインターネット)の時代到来で、通信関連企業は目下、その主導権争いを展開しているわけだ。

5Gが実現され、IoT技術が普及すると、家電製品や車などさまざまなモノがインターネットに接続され、モノの相互通信・データ収集が実現する。米国が恐れるのは中国の5Gの軍事利用だ。

海外中国メディア「大紀元」は、「ファーウェイの任正非CEOは元中国軍技術者で中国当局と緊密な関係にある」という。そして「ファーウェイは中国当局主導の『中国製造2015』計画のためにネットワーク設備や武器の製造を担っている」という。米上院議員(共和党)の中には、「ファーウェイは通信会社という仮面をかぶった共産党のスパイ機関だ」という声も聞かれる。米情報機関は2007年から、ファーウェイの動きを注視してきたという(大紀元)。

ファーウエイ製品は世界的に拡大し、占有率は既に米アップル社を凌ぐ。それに対し、欧米の政府は国家の安全保障上の理由もあって、中国共産党政権と密接な関係を有するファーウェイ社に懸念を有する国が増えてきたわけだ。例えば、欧州ではノルウェー政府が今年に入り、米国らと同様の理由から、ファーウェイ社を5G通信インフラ調達対象から外すかどうかを調査中という。

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、HSBC(香港上海銀行)とスタンダード・チャータード銀行の2行はファーウェイに新たな金融サービスの提供を中止するなど、ファーウェイ締め出しは世界の金融界にも広がってきた。

なお、日本政府は昨年12月、米国の決定を受け、「安全保障上の脅威とみなされた製品・サービスの政府調達を制限する」と決定。ファーウェイとZTEの製品を公的部門から排除する意向だ。ファーウェイ・ジャパンは日本では電波基地局や中継局のインフラを主に担ってきた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。