何故ドイツ銀行が注目されるのか?

経済に興味がある方や投資をする方はドイツ銀行の名前を時々耳にするかと思います。ドイツの中央銀行はドイツ連邦銀行でドイツ銀行はドイツ最大の民間銀行です。この銀行の経営は長年不振を極めており、その先行きが危ぶまれるような噂が絶えません。

仮にドイツ銀行が何かあった場合、どこかの国の銀行が破綻するんだろう、と聞き流すわけにはいかない原爆級の影響があるとされ、戦々恐々としている、というのが正直なところでしょう。

Bloombergより引用:編集部

そのドイツ銀行トップ、セービングCEOがドイツ政府と頻繁な会合をかさねているだけではなく、ライバル銀行、コメルツのアハライトナー会長とも複数回あっていたことがブルームバーグに報じられています。

ドイツ銀行をめぐってはいくつかの大きな問題、すなわち、数多く抱える巨額訴訟問題、パナマ文書の脱税指南に関するドイツ当局の調査、さらには昔から指摘される超ド級のデリバティブの残高があります。最後のデリバティブ残高についてはおおよそ7500兆円もあるのではないかとささやかれています。桁が大きすぎて何だかわからないのですが、そんな爆弾を抱えた銀行をもつドイツ政府がイタリアやギリシャに「あんたのところ、もっとちゃんとしなさい」とよく真顔で言えるものだと思います。

メルケル首相はドイツ銀行救済に消極的とされ、「大きすぎてつぶせない」というより「大きすぎて手が出せない」といった方が適切な状態にあるのかもしれません。そのため、かねてから同規模でやはりドイツを代表するコメルツ銀行が合併するという噂も出ては消え、を繰り返していたのですが、ブルームバーグの報道を読む限り何らかの議論は行われているように思えます。

ただし、いくらトップ同士が話をしたり、政府が仲介に入ってもこの合併がそう簡単にまとまるとは思えません。なぜなら失敗すれば共倒れが必至であるからです。

リーマンショック後、欧州危機がありましたが、私は第二の欧州危機の足音が聞こえてきているように感じます。また、欧州中央銀行の人事が大きく変わる年でもあり、10月のドラギ総裁他、7人の委員のうち、5人が今年、変わります。他に欧州委員会のユンケル議長やトゥスク大統領も秋に任期を迎えます。そんな中、メルケル首相も権力維持が難しくなるし、前回の危機脱却のための盟友、フランスもサルコジ氏のような振る舞いが不人気のマクロン大統領にできるか疑問符はつくでしょう。こう見ると欧州全体のかじ取り役がどうなるのか、という不安は隠せません。

また、ドイツ銀行と中国の関係もあります。かつては中国の海航集団が筆頭株主という時代もありましたが同集団の経営不振で株式は売却されています。ただ、ドイツ銀行と中国の関係はそんなものではなく、共存共栄とも言われるなか、中国の経済不振が際立っている中、そのかじ取りをどうするのか、セービングCEOの腕次第ですが、最近の写真等を見る限り、さえない表情ばかりのその様子に大丈夫か、と本気で心配している専門家はかなり多いかもしれません。

この問題がメディアを賑わさないことを祈りたいというのが本音であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月15日の記事より転載させていただきました。