「戦後最長の景気回復」の文字が躍っているのは日経新聞だけでしょうか?それを言うと皆さん、「えっ?」とむしろ驚く方も多いのかも知れません。年配の方は「好景気というは1965年から70年のいざなぎ景気のようなことを言うんだよ」とか、「80年代後半のバブルの時のような浮かれた感じがしないじゃないの」と言われそうです。
そもそも今回言われている「景気回復」とは何なのでしょうか?これは内閣府が毎月発表する「月例経済報告」で総括的に景気の方向はこんな感じ、と表現するものであり、感覚的なものであります。使用する統計は60弱もあります。それこそ、株価指標からGDP、消費者物価指数に失業率などから百貨店売上、コンビニ統計、自動車販売から電力統計にバルチック海運指数まであります。
それらをどんとテーブルに乗せて見渡して「概括するとこんな感じ」という表現を「景気は回復基調にある」とか「緩やかに回復している」と発表するのです。
ちなみにアメリカは今年7月まで続けば10年になるわけで日本だけ景観がよいというわけではありません。
日本のこの景観について、日経は過去の主要景気回復期に比べ今回はGDPで実質平均成長率が過去最低の1.2%にとどまるとしており、「実感なき景気回復」といったトーンの記事の仕上がりになっています。
外から見る限りにおいては日本は極めて安定飛行をしているように見えます。つまり、過去の高度成長期を飛行機の離陸(テイクオフ)と見做せば今は安定飛行を続けていると考えた方がよいのではないでしょうか?事実、戦後二番目の景気回復は2002年2月から08年2月でありました。これは見方によっては今世紀に入り18年の間に12年以上も「景気回復期」を享受したと考えるべきです。前回も実感なき回復でしたから国民生活が極めて安泰な状態にあるとみています。
人によってはその安定飛行の高度が低すぎるのではないか、何かあった時、急降下するのではないか、と不安ネタを並べると思います。これについてはそもそも人口が増えないし、外国人移民も積極的に受け入れない中でどうやって高度を上げるのか、という無理があります。
日本は内需主導型の経済であります。つまり税金を投入してモノを作る、あるいは消費者のがま口を開けさせるといったことで引っ張り上げてきた経済です。しかし、新しい地下鉄も高速道路もかつてほど建築する必要はなくなりました。モノだって皆さんの家に溢れているから買い替え需要が主力です。
他方、経済学に「一度高いものを経験すると安いものに戻りにくい」という法則があります。例えばビジネスクラスやグリーン車に乗り付けるとエコノミーや普通車に乗れなくなったり、普段、ちゃんとしたレストランに行く人はファーストフードチェーンに入れなくなるの同じで例え借金してでもその生活水準を維持したいと考えます。元芸能人や元プロスポーツ選手で家計破綻する人が多いのは浪費癖が抜けないからです。
これは経済に下方硬直性があるともいえ、仮になにか厳しい経済状況が起きても「山もなかったから谷も深くない」とも言えのではないでしょうか?よって個人的にはこの戦後最長がどこまで続こうが、どこかで息切れしたとしてもあまり心配はしていません。
ただ、景気を引き上げるための努力は必要です。小池都知事の東京を国際戦略都市にするとか、北方領土が返ってきて新たなブーム作るとか、訪日外国人をより地方に分散させるために地方の観光地に投資するなど努力は必要でしょう。
農耕民族は毎日耕して長い時間かけて収穫を楽しみます。狩猟民族はある日、デカい獲物をとって大騒ぎします。この違いのようなものです。安定している日本の今は幸せ期にあると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月30日の記事より転載させていただきました。