日本でシェアリングエコノミーが普及しない「2つの理由」

Flickr/Abhijit Bhaduri:編集部

保有するのではなく、利用したい時間だけ借りるというシェアリングエコノミーが世界的に広がり、それによって既存のビジネスが大きな影響を受けています。

例えば、UBER(ウーバー)が台頭し、タクシーは時代遅れなものになりつつあります。レンタカーではなく、個人間で車を貸し借りするカーシェアも広がってきました。

宿泊施設もホテルや旅館ではなく、AirBnB(エア・ビー・アンド・ビー)のような民泊の利用が増えてきました。また、飲食店に行かず、スペースマーケットで時間貸しの部屋を借りるといった流れも出てきています。

民泊や時間貸しビジネスをやるときにネックになるのが、利用者へのカギの受け渡しです。オートロックがあるような物件の場合、玄関にキーボックスを吊るすといったことができず、授受が難しくなります。

そんな、問題解決の方法として開始したのが、キーステーションというサービスです。これは、コンビニの店頭に置いてある鍵の受け渡しが暗証番号で簡単にできるサービスです。

私が六本木で運営しているスペースマーケット掲載の「会員制」時間貸し物件は、メトロ日比谷線六本木駅にあるファミリーマートに設置されたキーステーションを使っています(写真)。

スペースマーケットで利用予約をした人は、運営会社からキーステーションの場所と6ケタの暗証番号をメールで知らされます。コンビニに入って、キーステーションで番号入れると、鍵を取ることができます。スペースの利用が終わったら再び同じコンビニに戻り暗証番号入れて、鍵を返却する。このような仕組みになっています。

しかし、日本においてはこのようなシェアリングエコノミーの利用は、思うように伸びていないようです。六本木のキーステーションは、30本以上の鍵が預けられるようになっているのに、現在使われているのは、私の物件を含めて2つしかありませんでした。

その阻害要因は、シェアリングエコノミーに対する感情的な恐怖感と、既得権益の壁です。

マンションの管理組合などには、相変わらず「シェアリングエコノミー=悪」という偏見があるようです。新民泊法はエア・ビー・アンド・ビーの掲載件数を大きく減らす方向に「規制強化」しましたし、ウーバーは、タクシー業界の参入阻止の圧力のせいか、日本では相変わらず単なるハイヤーの配車アプリという地位に甘んじています。

既得権益が守られ、世界的なトレンドから取り残される日本。シェアリングエコノミーの普及を妨げる、先入観や偏見を修正し、規制を安全性に配慮しながら迅速に緩和していくことが、必要だ。キーステーションの利用状況を見ながらそう思いました。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。