元号を決めるに当たって、安倍首相が発表の前日の3月31日に皇太子殿下に状況を報告するそうだ。良いことだと思う。
それでは、首相は皇太子殿下の意向を反映すべきなのか。私の意見は、それはどちらでもいいが、大事なことは、皇太子殿下の意見が反映されたかどうかについて、殿下も首相も、また、ほかの関係者も決して口外しないことだと思う。
元号については、いろんな専門家から意見を聞いて、それをまたフィードバックして詰めていっているのだと思う。そして、3月31日に皇太子殿下に報告し、そこで、殿下が意見を仰るのか、また、首相がご意向を聞くのかも分からない。
そして、4月1日に複数の案が各界の有識者からなる懇談会に示されて意見を聴取し、それを菅長官が首相に報告して最終決定される。前例によれば菅長官が発表することになるが、首相が自らするかもしれない。
皇太子殿下の意向について、伝統的にいえば、意向を聞くものでない。そもそも、天皇陛下の一代にひとつのい元号にしたのも明治以降にそうしただけだ。古い伝統でも何でもなく、あまり難しく前例に拘る必要も私はないと思う。ただ、何事も現在の象徴天皇制のもとでは、天皇(この場合は予定者に過ぎないが)の意向がこうだというのは、できるだけ表に出ない方が良いと思う。
逆に天皇陛下も首相に希望はどんどん仰るのは構わないのではないか。イギリスでは、女王は政治問題や外交問題について意見を首相におっしゃっているはずだ。ただし、それは外に出てはいけないということになっている。出てしまったら女王は窮地に立ち、君主制廃止論が声高に唱えられることにすらなる。
私は日本もそういうやり方がいいのであって、天皇陛下は率直に首相と意見を交わし、議論し、しかし表向きにはそういう議論をしたことも含めて絶対に口外しないということであるべきだと思う。
平成という時代にあって、別に安倍政権に限ったことでなく、陛下と首相の直接の意見交換というものが稀薄だったのは良くなかったと思う。御退位にしても、眞子さまのようなことについても、陛下と首相が皇室についてのさまざまな問題について直接に意見を交さされたら、間接話法でよりよほどいい知恵が出たはずなのである。
その意味で、元号について首相が皇太子殿下と意見を交わされれば、これまでより象徴天皇制にふさわしい関係ができていくのでないかと期待したい。