ども宇佐美です。
さて今回は最近よく書いてるパチンコの話です。パチンコに関して書くと必ずくる批判に「パチンコ業界から北朝鮮に大量に資金が流れてるから、あんな業界潰れてしまえばいい」というものがあるのですが、それを今回のテーマとさせていただきます。
・かつてパチンコ業界から北朝鮮に相当な資金が流れていたのは事実である。
・その代表的なルートは以下の通りである。
①朝鮮総連が在日北朝鮮人*の歌劇団である「金剛山歌劇団」の公演を全国で行う
*便宜上 朝鮮総連に所属する在日朝鮮人をこう呼ぶ
②各地方の在日商工団体が公演に合わせて募金を募る。この規模は一回あたり10〜20億円規模に及ぶこともあったらしい。
③この資金は定期的に日本と北朝鮮の交流船であった「万景峰号」に乗っけて運ばられ、北朝鮮に現金で届く。この送金額は年間数百億円に及んだ。
・なぜ在日北朝鮮人がこのような一見何の見返りもない寄付を北朝鮮に対して行ったかというと、二つの理由がある。一つは家族、親戚が北朝鮮にいて事実上人質が取られた状態であったこと、もう一つは在日商工団体が「脱税しやすい環境」を整えてくれていたからだ。
・つまり北朝鮮への送金の原資は「脱税」だったということである。国税庁は否定しているが、かつて朝鮮総連と国税庁の間には「5項目合意」という合意が結ばれていたとされる。内容は以下の通り
①朝鮮商工人の税金問題は各地の朝鮮商工会と協議して決める
②商工団体への会費は損金として認める
③学校運営の負担金に対しては前向きに解決する
④北朝鮮への旅費は損金として認める
⑤裁判中の諸案件は協議して決める。
まぁ端的に言えば在日北朝鮮人に関する諸問題はなんでも朝鮮総連を通せということである。朝鮮総連はこうして「俺たちが脱税しやすい環境を作っているのだから、脱税した資金の一部は北朝鮮に寄付しろ」という要望を会員に対してしていた。
・しかしながらこうした北朝鮮の送金は現在ではほとんど行われていない。2015年に朝鮮総連は北朝鮮から「建国70周年記念に1億円本国へ送金しろ」と指令されたが、これを達成できなかったと報道されている。
・なぜこのようになったかというと収容な理由としては3つある。
①まず「万景峰号」を通した交流が止まり、また拉致問題が国家の主要課題になり、主要な送金ルートが次々と封じられたこと
②続いて、日本と北朝鮮の関係悪化により、在日北朝鮮人の日本への帰化、韓国への帰化、が増えたこと。朝鮮総連の組員は20万人から4万人を割るまでに減少している。
③さらに在日北朝鮮人に関してももはや3世、4世の時代になり、前述したような「北朝鮮が本国で人質を預かっている」というような関係が成立しなく無ったこと
である。
・他にも警察がパチンコ業界の業界団体の主流派から北朝鮮系の財界人を追放したことなど他の要因もあるのだが、いずれにしろ「パチンコ業界から北朝鮮に資金が流れている」というのはもはや過去の話で、現在は当たらないだろう。
・北朝鮮への資金流出を警戒するならばむしろコインチェック 案件ではないが仮想通貨業界を警戒すべきように思う。
・さらに詳しく知りたい人は新著「パチンコ利権」で書いたので参照されたい(結局宣伝)
ではでは今回はこの辺で。
宇佐美 典也 作家、エネルギーコンサルタント、アゴラ研究所フェロー
1981年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済産業省に入省。2012年9月に退職後は再生可能エネルギー分野や地域活性化分野のコンサルティングを展開する傍ら、執筆活動中。著書に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)、』『逃げられない世代 ――日本型「先送り」システムの限界』 (新潮新書)など。