銀行員よりワンルーム営業マンがエリートになる「下剋上」社会

昨日の日本経済新聞の報道によれば、メガバンク3行が2020年4月入社の新卒採用数を前年比で2割以上減らすようです(図表も同紙電子版から)。

かつては、エリートと見なされた大手銀行員ですが、マイナス金利によって銀行の利ザヤが縮小し、収益が悪化。今や、銀行員は高コストで付加価値を生み出せない人たちに変わりつつあります。

私もかつては銀行員でしたが、銀行員が提供してきたサービスの多くは、創造力が要求されるというより、定型的な業務を如何に正確にこなすかという性質のものでした。今では、AI(人工知能)などの技術で代替して自動化できてしまいます。

例えば、銀行員のエリートが配属されていた融資審査の仕事は、AIに任せれば、熟練した銀行員より短時間でより正確に意思決定できます。

実は、銀行員の仕事の多くは、このように機械で簡単に置き換える程度のものなのです(もちろん中には付加価値の高い仕事をしている人もいます)。

銀行は、これから支店などの拠点を減らし、リストラによって人件費削減に乗り出すはずです。もはや、銀行員はエリートサラリーマンというより、これから無くなっていく斜陽族という立ち位置になっているのです。

対照的なのが、例えばワンルームマンションの営業マンです。不動産業界は金融に比べてワンランク下の業界と考えられていました。その中でも、ワンルームマンションの販売というのは、大手不動産会社やマンションデベロッパーに比べ、下位に位置付けられていたのです。

銀行や証券会社はおろか、マンションデベロッパーにさえ門前払いを食らって、入社試験すら受けられなかった、面々が今やワンルームマンション業界で頭角を現しています。抜群の営業成績を上げて、年収数千万円を稼ぐようになっている人も珍しくありません。中には独立して、有名芸能人との交際を派手にスクープされている人もいます。

銀行員からすれば、相手にすらしてなかったワンルームマンションの営業マンが、今や自分の年収の数倍を軽々と稼いでいる。しかも、お客様に喜ばれ、さらに紹介で顧客層を広げている。

そんなサラリーマンの世界での下剋上が知らないうちに起こっている。学歴に関係なく、如何に付加価値を提供するかによって新しいヒエラルキーが生まれているのです。これは何とも痛快な出来事です。

日本の社会は戦国時代のような大きな転換期です。これからもこのような下剋上が、様々な業界で次々と起こっていくことでしょう。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年3月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。