「たくさん努力しているのに、なかなか上手くいかない」、「頑張っているのに、なぜか毎日が楽しくない」。そんなことにモヤモヤしている人はいないだろうか。
影響する因子はたくさん存在するはずだが、「習慣」にフォーカスすることで見えにくかった阻害要因がはっきりする場合がある。今回は、『習慣が10割』(すばる舎)を紹介したい。著者は、習慣形成のコンサルティングをおこなう吉井雅之さん。
パチンコという悪い習慣をやめるには
パチンコや競馬などのギャンブルがやめられない人がいる。ギャンブルが習慣になると、お金だけでなく、社会的な信用や家族との関係を失うことになりかねない。吉井さんは、ギャンブルをやめるなら「恐怖」の質問を自分に掛けるのが効果的だとしている。
「『パチンコを続けると、どうなってしまうのだろう?』と質問します。すると『家族との時間がまったく取れない』といった答えが出ます。『家族との時間が取れないと、どうなってしまうのだろう?』と質問すると、『家族の悩みを聞くこともできず、最悪の場合、家族がバラバラになってしまうかしれない』といった答えが出ます」(吉井さん)
こんな答えを突きつけられたら、ギャンブルをやめたいと思うに違いない。さらに、逆の質問もあるようだ。どのようなものか。
「『パチンコをやめると、どんないいことがあるのだろう?』と質問すれば、『家族の時間をより多く作れる』といった答えが出ます。さらに『家族との時間ができると、何が良いのだろう?』と質問すると、『家族を幸せにできて、自分の仕事にも好影響がある』といった答えが出るでしょう」(吉井さん)
「そうなれば、やはりギャンブルをやめたいという思いが生まれるはずです。ギャンブルを遠ざかるには、自分に質問して大事なものへの思いを引き出すことが大切です。そうすれば、ギャンブルを遠ざけることができます」(同)
コンサル業界の人なら、思考法によるものだとすぐにわかるはずである。いまの思考の流れは演繹法になる。演繹法は普遍的な事実を前提として結論を導きだす方法のこと。必然に必然を重ねるプロセスに特徴があり、結論はより真実に近いものが導き出される。
自己を啓発するにはどうすべきか
パチンコから得られるものは、数%程度の確率で勝つかも知れないという期待感やギャンブルへの高揚感である。勝算は数%で、勝った場合も、次のギャンブルの軍資金になるというデータがある。あぶく銭は泡のように消えてしまう可能性が高い。負の習慣を断ち切ることが大切である。
習慣とは行動様式のこと。経験によって後天的に獲得された固定された行動様式のことである。「早起きや規則正しい生活」「整理整頓」「運動」なども該当する。元旦に立てる目標も習慣といえる。
本書はビジネスで使用されている自己啓発理論が網羅されている。新入社員など若手ビジネスパーソンにおすすめしたい。しかし、自己啓発は習慣化しなければ行動様式に反映されることはない。自らに定着させるための作業が必須であることはいうまでもない。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
<筆者新刊情報/4月18日発売予定>
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)
[本書の評価]★★★(73点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満