昨日、ソニー・ミュージックアーティスツさんが、電気グルーヴさんのサイトで、所属タレントであるピエール瀧さんの契約解除を発表しました。
弊社所属タレントのピエール瀧が麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕されたことについて、
関係各所の皆様、ファンの皆様にご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めてお詫び申し上げます。本日、2019年4月2日に、ピエール瀧が上記違反により起訴されたことを受けまして、
ピエール瀧とのマネジメント契約を解除いたしました。なお、本件に関しましては、引き続き誠意をもって対応させていただく所存です。
すでにネットでも「誰のための誠意なのか?」など、賛否があがっていますが、私としては、この処置は大変残念に思います。
ソニー・ミュージックアーティスツさんの「誠意」とは何をさすのか?
私には「誠意」というよりも「保身」と思えて仕方がありません。
この契約解除が社会で「当たり前」と思われては、現場がとてつもなく困っていくことを是非知って頂きたいと思います。
この契約解除に対して賛成派の方々の意見に、「一般の会社ならクビになって当たり前」という意見があります。
そうです。だから問題なのです。
そして、そこの意識の変革を起こすためには、著名な方の処分がすごく大きな役割を果たすのです。
みなさん、では一般の会社でクビになった人達の行く末はどうなっているかご存じですか?
これは薬物に限らず、ギャンブル依存症の横領事件などでもよくあります。
非正規雇用もしくは生活保護です。特に報道で事件が扱われたりすると、今はその氏名がネットに残ってしまうため、就職が非常に難しくなっています。
さらに、解雇によって今までの生活が維持できなくなったり、時には近所に悪評判がたってしまい、そこにいられなくなったりして、引っ越しを余儀なくされますが、引っ越し先すら拒否される場合もあります。
こうして道を閉ざされた依存症者の負担は、「解雇当然!」と叫ぶ人たちの税金負担となってのしかかっているのです。
最悪は再犯に繋がります。
では、すぐに解雇するのではなく、治療の道筋をつけてくれたとしたらどうでしょうか?
このソニー・ミュージックアーティスツさんの発表が、同じ解雇というものであったとしても以下のような発表だったらどうでしょうか?
「本日、2019年●月●日に、ピエール瀧が保釈され本人と話し合いの場を持ちました。
その上で、本人は薬物問題の治療に繋がることとなりました。
ピエール瀧との契約はいったん解除させて頂きますが、本人が治療に真摯に向き合い回復することができれば、弊社といたしましても、再びマネージメント契約を結び再起を応援し、苦楽を共に歩むつもりです。
どうか今は本人の回復を温かく見守って頂ければと思います。」
これが、当たり前の社会になったとして、どんな不都合があるでしょうか?
「治療に向き合うつもりがないのであれば解雇されたまま社会に一人ぼっちで放り出されてしまうけど、治療に向き合い回復したのなら、また受け入れる用意があるよ、どっちにする?」って、企業にとってもスキルのある熟練の従業員などの場合、メリットがあることではないでしょうか?
また、再雇用が難しい場合でも、以下のような解雇だったらどうでしょうか?
「本日、2019年●月●日に、ピエール瀧が保釈され本人と話し合いの場を持ちました。
その上で、本人は薬物問題の治療に繋がることとなりました。
弊社もピエール瀧との契約は解除させて頂きますが、本人が治療に真摯に向き合い回復することを願っており、その道筋をつけるまでが弊社の役割と考え、真摯に対応させて頂きました。
今後も、本人の回復を温かく見守って参りたいと思います。」
これ企業の責任としてあたりまえじゃないでしょうか?
さんざん、稼げるときは本人を使ってきてですよ、仕事ができなくなったらツケは社会に回す。
もちろんピエール瀧さんの場合は、バンドメンバーの石野卓球さんがめちゃくちゃ愛情あふれた方のようですので、今後もお仕事を一緒にされていくでしょうし、社会にツケをまわしたりしないですけど、一般人の場合はこうなっちゃうんですよ。
警察官とか公務員なんて、薬物や横領の事件起こしたら、一発でニュースになっちゃいますからね。
仲間を見ていても再就職の難しさ、イヤというほど見てきています。
もちろん生活保護だって、それでやっていければ問題ないんですよ。
でも、治療受けずに問題止まらなかったら、再犯や自殺の問題にいきつく訳じゃないですか。
稼げる人は、治療を受け回復して再起をしてどんどん稼いで貰って、それを税金で社会貢献して貰う。
そのほうがよっぽど世の中のためになります。
だって例えばですよ、ピエール瀧さんを引きずり下ろしたって、その代わりになる人なんかいない訳じゃないですか。
あの曲、あのパフォーマンス!誰だってそうですけど、アーティストの作りだすものは唯一無二のものであるからファンがいるわけですよね。
そのファンが納得して回復したならお金を払う、そこに何の問題があるのでしょうか?
そもそも契約解除が誠意なら、今までさんざんお金を払ってきたファンへの誠意はどうなるのでしょうか?
今の芸能界の姿勢は、「今まで、ファンの人にはさんざんお金貢いで貰ったけどさ、これ以上関わると、ファンじゃない一般人から攻撃にさらされるから逃げるね。」ということじゃないですか。
だって「ピエール瀧のマネージメントをやるなら、もうソニー・ミュージックアーティスツのものは買わない!」なんて人は、多分普段から買ってないですよね(笑)
だってファン心理ってそういうものじゃないですもん。
その人を応援したいか?したくないかだけですよね。
「そのお金が反社会勢力にまわってもいいのか!?」と声高に叫ぶ人も意味がわからないです。
いや、それ言うなら、今まで回っていたかもしれないですけど、回復したら今後は回んないじゃないですよね?
第一、そんなこと言うなら、末端の使用者わずかばかりの金じゃなく、胴元というか元締めをしっかり取締できてないのが問題じゃん!?ってことですよね。
私なんか、麻取りはこんな末端の使用者じゃなく、「もっとでっかい取引現場抑えるのに全精力注がんかい!」と喝入れたくなりますけどね。
改めて、今回のソニー・ミュージックアーティスツさんは、何をもって「誠意」とおっしゃったのか?
是非、説明して頂きたいと思います。
田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト