先週4月10日、桜田義孝東京オリンピック・パラリンピック担当大臣が辞任をしました。1週間前に忖度副大臣こと塚田一郎国土交通副大臣が辞任をしましたので、またかって感じです。
辞任の直接の引き金は、都内で開かれた自民党の高橋ひなこ衆議院議員のパーティで、「復興以上に大事なのは高橋さんの当選」と発言したことです。来年の東京オリンピック・パラリンピックは「復興」の意味合いもありますから担当大臣がこのような発言をしたことは、本人の中ではリップサービスかもしれませんが、何も考えずに発言している感じです。
また、兼務するサイバーセキュリティ分野や文部副大臣時代の失言や見識のなさを幾つも露呈していました。文部科学副大臣として「(焼却倍は)原発事故で人の住めなくなった福島に置けば良い(汚染ゴミの焼却灰)」「職業としての売春婦だった。犠牲者だったかのような宣伝工作に惑わされすぎだ(従軍慰安婦について)」発言。
オリンピック担当大臣として「なぜ選ばれたか私はわかりませんが、それは総理が適材適所と思って・・・」「1500円でございます。あ、ごめんなさい。1500億円どございます(関連予算について)」「総額1兆3500円(大会予算総額1兆3500億円を言い間違い)」「五輪憲章を読んでいない」「2028アジアパラ競技大会(2018アジアパラ競技大会)」「いしまき市(石巻市)」、サイバーセキュリティー担当大臣として、「自分でパソコンを打つことはありません」「USBはよく分からない」などなど数々の失言で、辞任のタイミングが遅すぎたとも言われています。
こうした失言の度に、多くの人が私に「なぜこんな人が大臣やっているの?」と聞枯れました。その度に私は「本当ですねぇ」と答えていましたが、より詳しく聞いてきた人には「『順送り人事』だからですね」と答えていました。
どういうことか。
それは、桜田さんが当選7回という点がポイントです、国会周辺では当選回数がある一定以上行くと、「大臣適齢期」なんて言われます。桜田さんはちょうどそういうタイミングでした。当選回数もある程度ある人たちに、そろそろ大臣を担当させてあげようと大臣職が回ってくる。こういう順送り人事がありますが、当選を続けている人にとってみれば、やがて自分も大事になれることがモチベーションとなって自民党の党務や国会の仕事に励むことに繋がるわけです。
正直、「順送り人事」は派閥がもっと機能していたかつて時代の方がひどかったです。かつてとはいつか。それは、衆議院議員の選挙制度が各選挙区で1人を選ぶ小選挙区制になった、平成8年(1996年)より以前の中選挙区制の時代です。はっきり言って、誰でも当選回数さえ積み上げていれば、大臣になられたという時代でした。
小選挙区になってからは政権のダメージはそのまま選挙にも響きますし、下手をすれば、政権交代にも繋がってしまう。ところが中選挙区の時代は自民党の長期政権で政権交代はありえない状態で、誰もが大臣になり、仮に失言をしたら、トカゲの尻尾切りのごとく、辞任して終わり、そしてまた次の人がまた大臣を務めていた時代です。そういう意味では現在の方が順送り人事は少なくなっています。安倍政権では重要閣僚を固定化し、それ以外を「順送り人事」の対象としていました。桜田さんもその1人です。
ではなぜ安倍総理はこれまで桜田さんを辞めさせなかったのかというと、1人を辞めさせると、そのあとに失言や問題があった場合、すぐに辞めさせろと声が上がり、ドミノ倒しのような状態が起き、政権が弱体化していくリスクがあったからだと思います。
一方で、安倍政権は長期化していますので、やはり「傲慢」や「飽き」が嘆かれます。
個人的には桜田さんと思い出があります。
今から10年前の平成21年4月2日に行われた、自民党の道州制推進本部でのヒアリングに横浜市長として参加し、道州制や特別市構想についての自らの見解を話しました。その後の質疑応答で桜田さんが「世には色んな意見があることがわかりました。これほど違和感のある提案はない。」とボロクソ言われたので私は一言一句をメモして、その日の日記に書きました。
あのとき、「素晴らしいって言われなくて良かった」というのが今の感想です。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。