4月18日の各紙1面では個人情報保護、独禁法運用により、日本政府がGAFA規制を強めることが報じられていました。
私は昨年秋の日本監査役協会での講演や、当ブログのこちらのエントリーの冒頭で述べているとおり、「日本政府がGAFA規制を強めれば、ますますGAFAを利することになり逆効果」と考えております。昨日の産経新聞朝刊では、GAFAへのヒアリングを行った自民党政調副会長の木原議員のインタビュー記事が掲載されており、
聞き取りを通じ、独禁法や個人情報保護法を改正して規制を強化しても、資本と技術力に勝るGAFAはそれを乗り越えてくるだろうなと感じました。そうなれば規模の小さな事業者は対応が難しくなって逆に格差が広がる。規制と革新のバランスをとりつつ、公正で透明な取引を担保することが重要です。
と語っておられました。規制主体のメンバーの方から、やっとこのような発言が出てきましたが、自称GAFA研究家(?)である私からすれば当然のことと思います。たとえば具体的な例として、日経ビジネス2018年10月8日号「時事深層」(16頁以下)の記事を要約しますと以下のとおりです。
・日経記者が(記者であることを明かさず、一般人のふりをして)GAFA4社および国内のヤフー、楽天、LINEに(改正個人情報保護法に基づく)個人情報開示請求権を行使。各社がどのような記者自身の個人情報を保持しているのか、確認することが開示請求の目的だった。
・この請求に対して無条件で開示をしたのはFacebookとGoogleのみであった。他社からは「開示を求める情報の指定がない」「開示によってデータベースの管理、運用に著しい支障を及ぼすおそれがある」など、法の拡大解釈、条文の誤った解釈によって開示を拒否された。この事実を個人情報保護委員会は重大な法令違反とみて、2018年11月をめどに、同委員会は保護法ガイドラインの改訂に踏み切ることになった。
今朝の朝日朝刊では「優越的地位の濫用」に関する事業者アンケートの結果が公表されていましたが、GAFAを規制するための立法事実を集めようとしたら、日本の大手ITのほうがヤバイ状況であることが露呈されてしまいました。つまり、GAFAと同じ土俵のうえで日本企業が規制対象となってしまうと、競争格差は広がるばかりということです。
これまでのGAFAのリスクマネジメント戦略は、ハンパないくらい「人的資本」を充実させています。
具体的には①レッドオーシャンをブルーオーシャンに変える(規制の撤廃、規制に例外設置、自主規制策定、共同規制の活用、民事訴訟の活用で相手を圧倒、M&Aでグループ化)、②レッドオーシャンにおける競争優位を確保する(外圧利用、相手国の社会政策への協力、NPO・NGOの活用、自己適合宣言の活用等)、③レグテック(レギュレーション・テクノロジー)の導入(規制の強化、撤廃に関してクラウド、AIを活用して対応)といった手法が効率的に繰り返されています。
ということで、②では、日本政府の個人情報保護規制、独禁法規制に対して、GAFAがどのような対応に出てくるかを予想し、これに日本企業や政府がどう立ち向かうべきかを考えてみたいと思います。
山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。