日本の株式市場が盛り上がらないとされています。約7割は海外からのマネーで市場が形成されており、残りは機関投資家、各種法人、そして個人投資家であります。端的に言えば外国から魅力的だと思われなければ日本の株式市場は全般に盛り上がりにくい構造になっています。
ではアメリカなどでは株式指数が史上最高値をつけるなど全般的に好調とされる中でなぜ、日本株だけが取り残されているのでしょうか?
一つには日本企業の特殊性があります。24日に発表されたファナックの3月期決算で同社の純利益は15%減、20年3月期予想は60%減を見込むという衝撃的数字であります。ファナックは一般の方にはなじみがない会社かもしれませんが、高収益企業として日本を代表する会社でありますが、同社が10年前の利益水準まで落ち込むほどになったのはスマホ関連のロボマシーン事業が振るわないからこともあるという解説が日経にあります。
日本の経営特徴のひとつに全般的に儲かる事業に多くの企業が同じように勢力を振り向け競争激化による利益率の低下傾向が強いこと、また、エンドユーザー向け製品の事業や企業が振るわなくなった半面、高技術力を背景にした部品製造で圧倒的市場シェアと利益を保ってきたことでしょうか?これは儲かるときには皆が潤うが、サイクルから外れるとガクッと落ち込む傾向があるともいえます。
あらゆる産業のディファクトスタンダードが5-10年単位で変わっていきます。その中で変化にうまく対応できない企業が儲かると期待する「本業に集中」するため、事業そのものがより小さくまとまる傾向にあります。これは今はいいけれど先は見えないよ、という意味であります。例えば、東芝が東芝メモリを売却しましたがこれなどはリスクを取りたくない銀行出身のトップが取りがちな最も弱みのある経営姿勢の好例でした。
次に外国のマネーはボラティリティ(株価の振れ幅が大きいこと)はあまり好みません。出来れば中期安定がよいわけです。ところがこのところ、やりにくい株価が形成されている銘柄が散見されます。
例えばユニクロのファーストリテイリングですが24日終値ベースでPBRは6.83倍、PERは39.8倍と一般的なPBR1倍やPER15倍程度から比べるととんでもない高株価となっています。誰がここまで買い上げたかといえば日銀であります。買い上げすぎて市場で流通する株が少なくなり、株価が飛び跳ねる状態になっている典型的例であります。海外筋は論外なこの株価に冷たい視線を送っています。これは同社に限らず日銀が日本の上場企業の4割で大株主になっているという事実はあまり知られていません。
このような日銀のPKOともとれる政策が市場原理があるべき日本の株価形成をいびつにしてしまった点は否定できないでしょう。そのため、好材料、悪材料のたびに大企業であっても株価が10%、15%と動くこともあり、海外からは投資対象外になりやすくなるのです。
日本企業の財務的問題もあります。平成の時代に起きたことの一つに企業は銀行に頼らない自衛本能を持ち、とにかく、懐にお金を貯めこみました。これは財務体質がよいという見方と表裏一体である「企業として資金をうまく活用できないダメ経営」という言い方もできるのです。その結果、物言う株主たちが「うまく使えないなら株主に還元せよ」と迫るわけです。
日本の経営者は基本的におっかなびっくりの経営をしています。それは価格や品質、納期に対する日本の顧客要求が高いからであります。一方、海外は価格も納期も「できないものはできない!」という体質で「嫌なら他を探せ!」と言われます。ならば海外で「のびのび経営」をすればよいのに、といつも思うのですが、海外に基盤も地盤もノウハウもない企業だらけというのが実態でしょう。日本企業が海外で稼ぐ、と言っても大半が東南アジア。世界の全方位で頑張る企業などは知れています。
市場と対面している私から見ると日本の株式市場が盛り上がらないのは日本企業そのものの体質と日銀が生み出した泥沼でしょうか。日本企業にきらりと光る会社が少なくなったことも海外の投資家がスルーする最大要因になりつつあるかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月25日の記事より転載させていただきました。