ロ朝会談は何かをもたらすのだろうか?

25日、8年ぶりのロ朝会談がウラジオストックで行われました。当初24日に歓迎夕食会が催される予定でしたがこれがキャンセルされ、25日には文化公演を踏まえた夕食会が開催されることになっていましたが、両首脳はそちらに参加した模様です。

まずプーチン大統領はなぜ、1日遅れたか、ですが、その理由について2つの報道にずれがあります。産経は東シベリアで発生している大規模な火事の対策のため、チタに立ち寄ったためと報じています。一方、韓国中央日報はサンクトペテルブルクで海軍艦艇の進水式に出席のためとあり、チタに行ったのはトルトネフ露副首相兼極東連邦管区大統領全権代表だったと報じています。

朝鮮中央通信より:編集部

もともとプーチン大統領の時間管理はほとんど無茶苦茶な方ですが、海軍の進水式を優先したというのが正しいなら露朝会議への力の入れ方にはやや疑問符がつきます。あるいは端から25日の一本勝負のつもりだったかもしれません。というのはプーチン大統領は26日には中国で「一帯一路フォーラム」に出席し、習近平国家主席と会う予定になっていますので時間の効率化を図ったかもしれません。

さて、会談の内容ですが、断片的に聞こえてくるのを勘案するとまずまずだったという感じでしょうか?具体的に何か決め事があったわけではなく現在の北朝鮮がおかれている立場をどうとらえるか、ということと認識しています。アメリカ主導の制裁ではなく、「国際社会は『鉄拳制裁の法則』から離れ、国際法順守に立ち返ることが重要だ」(スプートニク、元のボイス オブ ロシア)とロシアは主張しています。

これは言い換えると力による抑え込みではなく、段階的非核化を含めた救いの手を差し伸べようではないか、ということでロシアによる北朝鮮取り込みの姿勢にも見えますが、プーチン大統領がどこまで本気なのか、私にはやや懐疑心があります。翌日に習近平国家主席と会う中で単なる中ロ同調路線というより中ロによる北朝鮮権益の確保についての探りあいのようにも見えるのです。理由はロシアにとって北朝鮮が経済的メリットのある国かどうか微妙だからでありましょう。

かつての戦争時代を振り返ればロシアは南下政策があり、不凍港を求めて朝鮮半島の支配権がどうしても欲しかったのですが、今の時代にそれを背景とした北朝鮮支配に手出しするかといえばNOだろうと思います。現時点では満州あたりに北朝鮮労働者を受け入れて単純な労働力の提供者としての位置づけ以上のものはないように感じます。

一方、金正恩委員長から見れば現状の厳しい経済制裁をどうにか緩める算段を図る交渉ルートとしてプーチン大統領とのコネクションを作ったという成果はあります。しかし、あくまでもこれはルートの開拓にとどまり、プーチン大統領が期待した通りの行動をするか、金正恩委員長の思惑通りになるかといえばこれははなはだ疑問であります。

中ロが今般の経済制裁に対して比較的距離感を置いているのはアメリカや西側諸国との対立軸を深めるほど北朝鮮が魅力的ではないこと、および金正恩委員長個人の魅力と行動規範を見ているのだろうと思います。何度か会合した習近平氏はその後、金正恩氏に傾注しているとは感じません。プーチン大統領も今回の会合で金氏の「人となり」を見たはずです。ある意味、それを踏まえて習近平氏と同調した意見に達したら金正恩氏にとってはむしろマイナスの結果すら出かねない状況にあるかと思います。

なぜ、距離を置くのか、といえば金氏のアメリカに対する低俗な罵り方に気が引けたのだろうと思います。いみじくもアメリカ側の交渉者のことを間抜けだ、担当を変えろなどと公式に言うのは子供のたわごと以下であります。習氏、プーチン氏がこの状況は救えないと思ったら金王朝はもうしばし、冷や飯となる気はします。

ロ朝会談は何かをもたらすのか、という点に関しては長期的には可能性を生み出したが目先の展開にはつながらないだろう、というのが個人的見解であります。一言でいえば北朝鮮を取り巻く国々は韓国以外、誰も熱くなっていないというのが正直な感想であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月26日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。