謝罪には「いい謝罪」と「悪い謝罪」があります。今回は、拙著『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)のなかから謝罪に関するエッセンスを紹介します。
絶対にしてはいけない「謝罪」、絶対に避けなければいけない謝罪とは何か?これは、「そもそも、どう謝罪をしても挽回できないことについて謝罪しなければならない状況」です。たとえば違法行為が該当します。
談合、収賄、背任、横領、契約の不履行、不倫など、法律に違反している、あるいは誰がどう見てもルールに違反している行為です。こうしたことをすると、いくら「いい謝罪」をしても、当然ながらリカバリーするのはかなり難しくなります。しかし、このような行為を促してくる相手もいます。
たとえば「発注先はA社にしてください。その代わり謝礼として○百万円お支払いします」と言われたらどうすればいいでしょうか。私なら、素直に「わかりました」と答えます。職責にもよりますが、相手の要望にたいしては「YES」と答えるのが、自分の印象を悪くしない唯一の方法だからです。相手のメンツもつぶさずに済みます。
その後、どうするのか。簡単です。相手には「わかりました」とだけ伝え、放っておくのです。その結果、A社に決まらなかったとしても、それでよしとします。ただし、この結果を受けて、依頼してきた相手は烈火のごとく怒るかもしれません。
ここで謝罪の出番です。「本当に申し訳ございません。今回は私の力不足です」。私なら、失意と怒りで満ち溢れている相手にそう伝えるでしょう。場合によっては土下座することもいといません。ここで絶対におさえるべきポイントは「自分の力不足」という点です。相手に責任はありません。
違法行為を要望してきた時点でキッパリ断るのはカッコいいですが、それでは違法行為を言い出した相手に責任が生じてしまいます。一方、一度相手の要望を引き受け、「やっぱりできませんでした」となれば、これは自分の責任に変えられます。もちろん、実際に違法行為に手を染めてはいないわけですから、法的な責任をとらされることはありません。
このようなケースでは、相手にも後ろめたい気持ちがあります。平謝りすれば矛をおさめるはずです。もし、違法行為を依頼してきてもまったく意に介さないような相手なら、それはそれで問題です。こういう相手は、いずれあなたに危険をもたらす可能性があります。その場合、その人との付き合いをやめるなど、対策を考える必要が出てきます。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※4月19日に『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。