欧州議会選挙をご存知でしょうか?欧州の個別の国ではなくEUという括りにも議会があり、その選挙は5年に一度行われます。そしてその5年の区切りに当たる選挙が5月23日から26日にかけてEU各地で繰り広げられます。この有権者は4億人にのぼり、世界でも最大級の選挙であります。
にもかかわらず、ほとんど知られていないのは何を共通の利益とするのか、これが明白ではないからでしょう。事実、この議会には右派から左派までずらりと並びますが、最終的には中道左派と中道右派が手を結び、議会運営を維持するという構図があります。ならば政党をもっと減らせばいいじゃないか、とも思うのですが、EU加盟国28カ国それぞれの思惑なのかもしれません。
これは争点や主張ごとにいくらでも政党は作れるともいえるわけで日本でも地域政党ともいえる維新や都民ファーストといった政党が躍進しています。また、当地にもある緑の党は割とどこの国や地域にもある環境重視派のマイナーな政党ですが、必ず議席をいくつか持つ政党であります。
かつて政治とは二大政党が激しくぶつかることが主流でした。英国やアメリカもそうです。その英国はいまや20を超える政党があります。今回EU離脱を目論むという「劇場型政党」すら生まれる勢いの中で政党とは何だろう、思う時代が来たのかもしれません。
何故二大政党が長年根付いていたか、とすればかつては国民の仕分けである「使う方」か「使われる方」か比較的単純な構図であったことがあります。いわゆる資本側と労働側であります。ところが労働者への社会的配慮が充実し、生活レベルも上がることにより労働側は搾取されてきたことによる不満からより社会への参加意識を持ち始め、個々の主義主張が生まれます。同様に資本家層も自分の利益をだけを守り通したいと考えるスタイルから社会の中に溶け込みながらうまくやっていくという発想の方も増えてきました。これが思想の多様化でありましょう。
これは様々なオプションを生み出します。原発反対を訴える人、移民反対を訴える人、収入格差を訴える人、環境破壊を懸念する人…など多くのボイスがぶつかり合います。上述の地域政党もその範疇に入るかと思います。
これは選挙民に本当にメリットがあるのか、疑念がなくもありません。劇場型政党の場合、ある一点については同意したとしても他の部分がおざなりになりかねないのです。住民を取り巻く問題は全方位にわたるわけで一つの問題が解決できても他の10の問題が放置されかねないリスクを背負っていると思います。にもかかわらず劇場型がよりポピュラーになるのは分かりやすさであり、洗脳に近いものはあるのでしょう。
欧州では確実に移民反対を唱える極右という政党が徐々にその勢力基盤を広げています。今回、スペインの選挙でもボックスという極右が10%の議席をとり、世界中で驚きをもってこれを報じています。極右の目指す移民反対は限られた労働市場に外部の人間が侵食することへの懸念であり、保身そのものであります。トランプ大統領が言うメキシコ国境に壁を、というのも同じです。非常に限られたイシューについて強力でインパクトあるメッセージを発散するのはSNS型社会に完全にマッチしているとも言えます。
わかりやすく言えば深みがある味より激辛に走るということかもしれません。
多党化による政治とは連立政権と妥協が主体となりますが、それに応じないケースも今後、多々出てくることが想定され、政治停滞も大いにありうるでしょう。それは民主化の進歩でもあり、混迷でもあります。その間に中国や北朝鮮のような一党独裁制度を持つ国が国民の意思にかかわらず強引な政策を進めることで世の中の歪も生まれてくるのでしょう。ただ、その中国も巨大すぎて統治できない問題を抱えているように見えます。体制分裂がないとは言えない気がします。
政治は本当に難しくなってきたと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月8日の記事より転載させていただきました。