4日午前9時06分、北朝鮮は元山半島から東に向け複数の短距離ミサイルを発射。これにより、金正恩自ら表明した南北和平と非核化の約束はすべて嘘だったことが分かった。
今回のミサイル発射は2017年11月29日、火星15型弾道ミサイル発射から1年6ヶ月ぶりで、金正恩が就任してから87回であり、3代にわたって118回目だ。
韓国に対する威嚇であり、文在寅大統領に「もっと、お金と物を送れ!」「米国をもっと説得して」というメッセージだろう。
韓国国防省は当日の午前9時24分に[ミサイル]発射と発表したが、40分後に[短距離発射体]と呼称を変えた。北のミサイル発射は国連決議違反であるため、大統領府の指示を受けた変更と考えられる。
国家情報院も「ミサイルではなく、放射砲」と事実を歪曲している。
今回の発射は文在寅政権の面子を潰すだけでなく、昨年の9.19南北軍事分野合意にも違反する。
これを放射砲レベルに縮小しようとする文在寅政権の「北朝鮮庇い」は、北朝鮮自身が5日朝、労働新聞を通じて公開した写真で偽りであることが露呈した。写真には240㍉、300㍉放射砲と一緒にミサイルが発射される姿が映っている。
このミサイルは、ロシアの弾道ミサイル(イースカーンデルM)をモデルしているが、韓国の玄武Ⅱミサイルとそっくりだ。固体燃料を使用し、最大飛行距離は約500㌔㍍と推定される。問題は、この新型弾道ミサイルが終末段階でホーミング(誘導方式)角度を変化させると、サード(THAAD)とパトリオット(PAC3)ミサイルによる迎撃が困難なことだ。
さらに、500㌔級核弾頭搭載も可能だ。液体燃料ミサイルは燃料注入に約1時間かかるが、このミサイルは、移動用車両から発射される固体燃料ミサイルであるため、発射準備に5分しかかからない。韓国側が対応できる時間的余裕がない。
トランプ大統領はツイッターで「金正恩は、私との約束を破りたくないだろう。合意は守るだろう」と述べているが、これは、鷹が攻撃意図を隠すために爪を隠す[企図秘匿]ジェスチャーだ。
予想を覆してハノイ米朝会談を決裂させたトランプ氏は老練な国家経営者として、時間稼ぎをしているのだろう。
費用対効果を最大化するにはタイミングが重要な要素となる。来年の大統領再選に向けて、効果を最大化するためにタイミングを調整しているようだ。経済制裁を強化して独裁体制を崩壊させるソフトランディングが上手くいかない場合、選挙の1、2ヶ月前に軍事行動に踏み切って、独裁体制を崩壊させるハードランディングを視野に入れているように推測される。金正恩は日が経ってるほど、生き残るための選択肢の岐路に迫られている事が分かる。
(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任)
※本稿は『世界日報』(5月9日)に掲載したコラムを筆者が加筆したものです。
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