5月後半は安倍首相にとって、憂鬱な外国の選挙結果が予想されていた。オーストラリアでモリソン首相与党の敗北が決定的といわれ、インドでもモディ首相が苦境にたっていたのである。
ところが、オーストラリアの総選挙では、与党保守連合(自由党、国民党)が下院選(定数151)で少なくとも現状維持で予想外の勝利を収め、モリソン首相の続投が確実になった。
経済のぱっとしない動きのなかで、労働党は低所得者向けの減税、最低賃金引き上げ、温室効果ガス削減、不動産・株式投資家向け優遇措置の縮小といった政策を主張したが、掲げたが、経済不安がかえって政権交代を不安視させた格好だ。
インドでは1ヶ月近くにわたって投票が地域ごとに行われ、開票は23日に一斉に行われる。これまでは出口調査の公表が禁止されてきたが、最後の投票が終わったところで報道が解禁となり、モディ首相の率いるヒンズー主義保守政党である人民党が、ネルー・ガンジー一家の率いる国民党に勝利し、かなり安定した政権運営が可能になる議席を確保した模様である。
このインドとオーストラリアの保守政権は、中国とは距離をとり、安倍首相の価値観外交の主たるパートナーだった。それだけに、政権交代しても急激な政策変化はないだろうとはいうものの、憂鬱な材料であった。
とくにオーストラリアでは与党敗北が決定的といわれ、むしろ敗北は織り込み済みだった。インドも僅差といわれていたが、いずれも予想外の朗報である。また、積極的に保守政権を支援してきた安倍首相の支援が勝利に貢献したともいえる。
「価値観外交」は、日本、オーストラリア、インドの政権が安定し、アメリカでもトランプ大統領の登場でこれがてこ入れされ、さらに、フランスやイギリスがインド洋・南シナ海・太平洋でのこれら諸国との軍事協力強化に参加するという望外の展開で、予想をはるかに超えた成功を収めている。
幸い中国も軟化しつつあり、あとは、南北朝鮮の迷走を通り越した錯乱状態への対処だけが問題になってきたが、余裕をもった対応が可能になる状況である。