丸山穂高衆議院議員(日本維新の会)が、「北方領土は戦争しないと取り戻せないのではないか?」という趣旨の発言が報道で取り沙汰されています。当初、丸山議員は「こうした意見をどう思うか?と尋ねただけだであり、問題はない」と説明していましたが、その後、撤回と謝罪をしました。
2019年5月11日夜、1992年に始まった北方領土の元島民とロシア人島民らの交流事業(ビザなし交流)の行事後、国後島の施設「友好の家」で丸山議員が大塚小彌太団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」とお酒に酔い発言しました。
現在の北方領土はロシアがソ連時代から不法占拠しており、日本の漁船が銃撃や拿捕されるなどしています。さらに、かつての島民がお墓参りに行くことすら容易ではありません。しかし北方領土は日本の領土でありながらも、ロシアからビザを発給されて行くのはおかしいということで、旅券(パスポート)、査証(ビザ)なしで、外務大臣の発行する身分証明書などにより渡航が認められているビザなし交流という形で渡航が認められています。
さて、「戦争しないと戻ってこないのではないか」と戦争持ち出すことは、賛否は別として、一つの見解としてはあり得ると思います。しかし、日露間で交渉中の問題について、国会議員がこの種の発言をするということになると、これはやっぱりまずいですね。
なぜならばロシアに口実を与えるからです。実際、ロシア上院のコサチョフ上院国際問題委員長は、「もし(発言が)本当なら、日ロ関係にとって最低だ。そうした発言をするのは、問題の本質的な解決を望まない人物だけだ」と非難しています。
政府に入っている国会議員でもなく与党議員でもありません。野党の一議員の発言ですが、ロシア側に日露交渉を停滞させる口実を与えてしまうことになりかねません。
マスメディアは「戦争」と発言したことが問題と扱っていますが、それ以上に重大な問題として、国会議員として外交関係の停滞を招きかねない発言があったことが問題なわけです。これを問題視して野党は丸山議員に議員辞職勧告決議案を提出しました。自民党は、発言内容で議員辞職勧告はいかがなものかとここは慎重で非難決議案の提出を検討しています。
確かに、どこからが辞任に値するのか、どこまでの発言なら許されるのかというのはなかなか難しいところです。また、自民党が一番そのターゲットになりやすいという事情もあるでしょう。
いずれにしても丸山議員は辞職をする意思はないようです。
発言後の17日、維新の会の片山虎之助共同代表が在日ロシア大使館へ出向き、ルーチン大使に丸山議員の発言は、日本維新の会の考えではないことの説明と謝罪に訪れました。
これに対して丸山議員は「意味不明」とツイッターで批判をしています。日本維新の会としても、厄介者だった丸山衆議院議員をこれを機に切る。そして、参議院議員選挙のダメージを減らしたいという思惑もあったと思います。
政治ですから、1人の議員の発言、その内容にも焦点は当たりますけれども、各党の思惑という裏もあるんですね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。