日本の社会でずっと抵抗感がある消費税。二度の延期を受けて三度目の正直になるのか、二度あることは三度ある、になるのか様々な「読み」があるところですが、個人的には上がるのだろうな、と思っています。
上がらない(いや、上げない)と願っている側の論拠は米中通商戦争の行方次第で日本も相当の影響を被るだろうというものです。では米中通商戦争が最悪の時代を招いたとして、リーマンショック級の景気後退を招くか、といえば現時点では想像しにくいと思います。大規模で世界規模の経済崩落の原因は想定外の事態が発生し、対策が追い付かない場合が多いわけですが、今回の通商問題は交渉であって、コントローラブルであります。
両国が貿易の扉を閉めるとは諸刃の矢であって、無意味であることは100も承知。ならば、それが引き金でリーマンショック級の経済変動が起きると考えること自体がふしだらであります。
一方、政府は景気判断を6年2カ月ぶりに「悪化」としました。外需が伸びないことがその主因とされますが、オリンピック前の内需もありますので仮に景気変化の局面にあるとしても消費税増税を取りやめるほど大幅な下落とはならないとみています。
昨日発表された1-3月のGDPは想定外の0.5%成長(年率換算2.1%)となり、事前の専門家の予想をことごとく覆しました。(ただし、中身は非常に悪いのでこの件については別の時に考察したいと思います。)消費税引き上げに関して最後のGDP発表となる4-6月は内需が間違いなく引き上げるのであまり懸念していません。つまり景気面からは消費税引き上げを止める理由は見えにくいと思います。
もう一つ、仮に消費税を引き上げれば4度目になります。はじめは3%、その後5%、8%、10%となるのですが、引き上げ幅だけ見ると3%、1.94%、2.9%、1.85%となりインパクトは一番小さいのです。オリンピック前景気を前提にしている今回、延期をすれば「首相のほら吹き」になってしまいます。
さて、日本がなぜ消費税に対して厳しい目を持っているかといえばサラリーマンなどが税や健康保険料、厚生年金などが源泉され、こんなに取られていると思っているところに更に追い打ちのように使った分に対して税がかかるからでしょうか?どこの国でも似たようなものではあるのですが、薄給の上に更にこんなにとられる、という意識は高いかもしれません。
もう一つは日本の貧困率が15%程度と先進国の中では高めに推移していることがあります。同じ税金でも可処分所得が多い人と少ない人では税負担の重みは全く違ってきます。
日本は金持ちの国ではないのか、と思われますが、統計の読み方を変えるとそんなに裕福ではないのです。特に年収などを表すのに平均年収で表現することも多いのですが、これは高所得者が平均値を引き上げるため、本来であれば中央値(一番多い層)を見るべきだと思うのです。そうすると中央値はざっくり平均より1割ほど下がってしまうのです。つまりごく普通の家庭の所得は決して高くなく、そこから1割も更に消費税を持っていかれるのは勘弁してほしいというのが実態でありましょう。
ところで最近カナダでとんでもない税金案が飛び出しています。固定資産税なのですが、その計算根拠となる不動産の評価額について土地を「best and highest use」を前提に計算するというものです。例えば本来は10階建が建つ土地に平屋しか建っていない場合、驚くほどの固定資産税が来る、というものです。
これがどうなるかはともかく、固定資産税のように持てる者により多くの税をかけるという発想は税の公平性からするとやりやすいのかもしれません。
また国の財政を考えた時、歳入の部分だけに目が行きますが、歳出の社会保障費の伸びを抑える方法を早く講じるべきだと思います。政府は足りないから上げる、ではなく、高齢化に伴う社会保障費をどうコントロールしていくのか、そちらにももっと注力してもらいたいと思います。
一部の専門家はプライマリーバランスをするために消費税は〇〇%ではなくてはいけない、などという方もいますが、それはあまりにも無謀で前提条件が現実を直視していない計算であると思います。個人的には今回、上げてそれで消費税引き上げは当面、打ち止めというメッセージを送ると共にどうしたら国家財政の健全化を図れるのか、再考すべき時期に来ていると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月21日の記事より転載させていただきました。