小さい頃は、能力や才能を伸ばしたいと思うものである。子どもの得意技を見つけて伸ばそうとか、勉強ができるように小学校前に先取りさせるとか、様々な本を読んだり、幼児塾にも行かせる親は多い。ではいったい何が正しいのか?
今回は『子どもの能力は9歳までに決まる』(大久保博之【著】、サンマーク出版)を紹介したい。
■一般教育とは真逆の「幼小一貫」
著者の大久保さんは子供教育を「幼小一貫」で考えるべきだと主張する。
(大久保さん)「今の日本では3~5歳の『幼稚園教育』と、6~12歳の『小学校教育』で中身がガラリと変わってしまいますが、本来は0~9歳を一区切りと考えて、一貫した『幼少教育』を行うべきなのです。たったこれだけで、子どもの学力は最大限に伸びていきます。なぜなら、これこそが脳のプログラムに沿った教育だからです」
(同)「学力というのは『脳の器』の大きさと、その器に盛った『ご飯』の量で決まります。わかりやすくいえば、『才能の大きさ』と『努力の量』といっていいかもしれません。ここで覚えておいてほしいのは、『脳の器』を大きくできるかどうかは9歳までの教育にかかっているということです。どんなに努力したとしても『脳の器』は9歳までしか伸ばせないことが、科学的に証明されているのです」
大久保さんは、0~9歳は「脳の器」を大きくすることに集中すべきだと言う。「脳の器」を最大限に育てたうえで、10歳以降はその器にご飯を盛っていくことが大切である。
(大久保さん)「これがもっとも効率的かつ合理的な学力の伸ばし方です。脳の器を大きくするための作業は、ご家庭で簡単に実践することができます。それらの行動が習慣化すれば、子どもの学力はぐんぐん伸び、受験戦争や部活で勝ち抜く力がつくだけではなく、将来の稼ぐ力や幸福感にも影響するというデータもあります」
(同)「脳のプログラムに沿った幼小一貫教育は、学力と心の強さの両方を一度に伸ばせるのです。現代の日本では幼児期からの教育がますます過熱する傾向にあります。その中心は「読み書き、そろばん」にまつわるものですが、これは脳の機能のほんの一部に執着した学習にすぎません」
■試す価値は十分にある
約15年前、子ども向けEQ(Emotional Intelligence Quotient)を手掛けているとき、子どもが何をきっかけに勉強を好きになるか調べたことがある。結果は、知的好奇心が刺激される勉強は好きになるというものだった。運動神経の良い子どもに体育嫌いは少ないし、昆虫採集が理科好きに結びついたり、読書が国語好きに結びつくといえばわかりやすい。
「勉強しなさい」は、頭ごなしに子どもの言い分を聞かず、決め付けた態度をとることから嫌気を感じてしまう。知的好奇心が刺激されることもないから、このまま勉強嫌いになってしまう可能性が高くなる。「勉強しなさい」と言われて「よーし、勉強する気になってきたぞ!」なんて思う子どもはいない。
主体的にやると決めたことにはやる気が高まるが、人から強制されることには、なかなかやる気が起きない。本書を読むことで、親が知っておくべき、子どもの接し方が理解できるようになる。幼児教育と高等教育とで乖離が進んでいる今だからこそ、「幼小一貫」の教育を自宅で実践することにはメリットがあると考えられる。
[本書の評価]★★★(79点)
【評価のレべリング】
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満
※評価のレべリングについて
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。