市議会議員の本気の討議「各種委員会」の動画公開が急がれる、という話

高橋 富人

市議会において、「公開可能な会議」の録画データの公開の有無が、情報公開に積極的な市議会であるかどうかの一つの指標です。

事例として、佐倉市議会の動画公開の現状を図にしてみました。


上図のとおり、ライブ中継、録画動画ともに、公開しているのは「本会議」のみです。

「本会議」は、基本的に「常任委員会」などでの議員たちによる討議を経た後の「議案の賛否」表明と、用意された質問原稿などを議員が読み上げる場です。もちろん「本会議」の公開も重要ですが、議員たちのいわゆる「ガチの討論」や本音、取り組みの本気度を確認するには、表中左の「各種委員会・協議会など」を見る必要があります。

しかし、佐倉市議会で動画公開されているのは「本会議」のみ。

議会ごとにすべての討議を見ることはないと思いますが、興味のある議案があがったとき、どの議員がどんな意見を言うか、確認したいと思いませんか?しかし、平日昼間開催の議会の「各種委員会・協議会など」を傍聴することは、現役世代は「無理」でしょう。

現状では、議会が開催されてからずいぶん日を置いてから公開される「議会議事録」だけが頼りです。しかし、議会開催から長い日数がたった後、膨大な議事録から、自分の読みたい箇所だけインターネットで探しだして読む、なんて通常しません。

他方、佐倉市議会には、「議会基本条例」という条例があります。佐倉市議会の「運営の大原則」ともいうべきこの条例の趣旨と内容を見る限り、公開可能な公式会議を「動画公開しない」という判断をする理屈はない、というのが、私の結論です。

約束されている「十分な公開」の大原則

2010年12月28日に発令された「佐倉市議会基本条例」には、以下のような内容が明文化されています。

「前文 議会及び議員は、積極的な情報公開を通じて、市民への説明責任を果たし、(中略)政策立案や政策提言を行っていかなければならない。」
「第6条 議会は、市民に対し、積極的に情報を発信し、説明責任を十分に果たさなければならない。」
「第6条2項 議会は、原則として、全ての会議を公開するものとする。」

以上のとおり、佐倉市議会は、「積極的な情報公開」をし、「説明責任を十分に果た」すべく、「全ての会議を公開」しなければなりません。

さて、平日昼間の議会を傍聴できるから、鮮度を失った膨大な議事録全文をネット検索できるから、基本条例の趣旨のとおり、十分な情報公開ができているといえるでしょうか?

もし会議の模様がしっかりと動画公開されていたら、たとえば先の記事で説明した私の「会派代表者会議」に感じた「違和感」が、市民感覚としてずれているのか、まっとうなものなのか、事後に市民の皆さんに問うことができました。

他市の取り組み

私が調査したところでは、政令市の多くは、委員会などを含む傍聴可能な会議を動画公開しています。

政令市以外では、確かに「傍聴可能な会議のすべて」を動画公開している事例は、私がざっくり実施した調査からすると「まだまだ」というのが現状です。

しかし、佐倉市も制定している「議会基本条例」の、他市での制定割合でいうと、2017年の段階で約60%。相当な数の市がすでに、佐倉市と同等程度の内容をもつ「議会基本条例」をもっています。

「議会基本条例」で公開の原則をうたっていながら、公開可能な会議体の録画を公開していないのは、「議会基本条例」を持つ資格のない議会、といわざるをえません。

「公開したいけれど、予算がなくて・・・。」という理屈も、数年前までならある程度説得力がありました。しかし、現在「録画公開」をしている自治体のほとんどが、Youtubeにて無料で配信しています。「セキュリティは大丈夫か?」というのでしたらご安心を。私の古巣である、日本のネットセキュリティの総本山ともいうべきIPAでも、Youtubeでアカウントをもって動画公開しています。

ざっと調べたところでは、初期費用は最高額で上越市の約100万円(カメラ購入・設置費用、配信用PC費用など)。最低額は橋本市の約3万円(カメラ1台購入費のみ)。ランニングは、Youtubeでの公開を前提にしている基礎自治体ならば、最高額で上越市などの月額5,000円(光回線使用料)程度。最低額では長野市の0円(既存の回線を利用しているため)。

ざっくり言えば、どの自治体も、会議の前に議会事務局(市役所職員の方)がスタートボタンを押し、会議終了と同時に停止ボタンを押す、という運用だそうです。

もちろん、自治体の事情により運営にかかる手間はいろいろありますが、基本は議会事務局の方々のご苦労により、業者を入れることなく運営されているようです。

公開しない理由がない、というまとめ

いかがでしょうか?このような時代に、立派な議会基本条例を持つ佐倉市が、「公開可能な会議」の動画を、Web公開しない理由があるでしょうか?以上にあげた費用すら捻出が難しい、というのであれば、議員定数を1つ減らしてでも取り組む価値は十分あります(その場合相当な予算が余りますが)。

6月11日(火)、またもや私のような「無会派議員」になんの調整もないままに、「議会改革推進委員会」と「広報公聴委員会」の委員を、「会派代表者会議」で決定する、という趣旨の通知を、先ほど市議会議長であるさくら会の石渡市議名義の書面にて受領しました。

平日の午前9時からですから、ほとんどの方が傍聴できないかもしれませんが、お時間があればぜひ佐倉市議会にお越しください。先のとおり、この「会派代表者会議」は、Web公開されていないので、現場でご確認いただくしかないのが現状です(涙)。

私は何の発言権もありませんが、このような状況を改革するメンバーになることができるのだとすると、「議会改革推進委員会」の委員になりたいなぁ、と思いつつ本稿を終えたいと思います。


末筆になりますが、本稿の調査のため、快く電話対応に応じてくださった多くの市の議会事務局の皆さまに、心よりお礼を申し上げます。

高橋 富人
佐倉市議会議員。佐倉市生まれ、佐倉市育ち。國學院大學法学部卒。リクルート「じゃらん事業部」にて広告業務に携わり、後に経済産業省の外郭団体である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で広報を担当。2018年9月末、退職。
出版を主業種とする任意団体「欅通信舎」代表。著書に「地方議会議員の選び方」などがある。