農林水産省の元事務次官が長男を殺害した、というニュースは現代社会の病の典型でした。これを単なる殺人事件と受け止められない重圧感を感じた方も多かったのではないでしょうか?私もその一人です。
事務次官とは官僚のトップです。役人の最頂点に立つ優秀な方のお子さんは引きこもりがちでゲーマーで無職の44才でありました。このギャップは何なのでしょうか?子育ての原点に立ち返らねばならない気がしています。
子供が堕落していく原因の一つに幸せ過ぎる家庭環境もあるかもしれません。親に一定の地位や収入があり、他の子どもたちからちやほやされる幼少時代を送ると自分が王様になったような感じがしてくる子供もいるでしょう。また少子化で一人っ子が当たり前になってくると母親は子供を溺愛し、この元事務次官の方もそうだと思いますが、父親はほとんど家にいない生活になります。
子供はドンドンわがままになり、ゲームなどにはまっていくのですが、最近のゲーム狂いにはもう一つ理由があります。それはクラスメートなどが家からオンラインでゲームに参加してくるため、「〇〇君も〇〇君もいるから今はゲームから抜けられない」というものです。
昔KYという言葉がありました。「空気読めない」で女子学生の間で特に普及したと認識していますが、男子もこのオンラインゲームでクラスメートなどと一緒に遊んでいるとそこから抜けることがKYになるのだろうと察しています。
5月下旬、世界保健機関(WHO)がゲーム依存症をゲーム障害という疾病に認定しました。今後、どういう場合が疾病に当たるか、具体的な基準と処置が出てくると思われますが、早急に対策を取らねば危機的な状況に陥る気がします。
引きこもりになりやすい原因は社会的交流が不得手になることが一つの理由かと思いますが、その背景は人間関係の欠如、議論や討議なく、切れやすく、各々がバラバラになることにより社会より家に引きこもることで楽になりたいという発想が背景にあるのだろうと推測しています。もちろん、こんな簡単な言葉で語りつくせるものではないのですが、幼少期に鍛えるべき我慢する力、共生する力、コミュニケートする力などが圧倒的に不足してきていると考えています。
そうなるとどうしても切れやすくなります。上述の事務次官のケースでも殺された長男が近所で行われていた小学校の運動会の音に文句を言い始めたことに「周囲に迷惑がかかる」ことが動機と報じられていますが、これは最終的なトリガー(引き金)であってお父様にとっては以前から腹に据えかねた我慢できない状態にあったのでしょう。
多くの似たようなお子様(子供と言っても先日の川崎の児童襲撃犯のように51歳というケースもありますがこれも子供という視点では同じだと思います。)を抱える親御さんにとって脅威であると感じていることでしょう。
現代社会が生み出した大変懸念すべき問題です。学校が悪いとか家庭の教育が悪いという犯人探しではなく、大人が対処できなくなった社会と子供の急速な環境変化に対して社会が一丸となって取り組む姿勢を見せなくてはいけません。
ゲームは一日1時間など決められた時間で強制終了されるソフトが標準装備され子供がどれだけやっても使えないような対策を施し、ゲームが主流ではない生活をまずは体験させることが肝心でしょう。
事務次官の苦悩、本当にかわいそうな話です。こんな悲劇はもうたくさんです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月3日の記事より転載させていただきました。