毎日新聞vs. 原英史氏 フェイクはどちらか②毎日新聞に誠はあるのか

田村 和広

キャンペーン継続、4日連続単独「スクープ」

毎日新聞は6月14日も原英史氏に関する続報を掲載し、これで4日連続単独1面掲載となる「国家戦略特区ワーキンググループ(以下WG)原英史氏」に関する疑惑記事を「スクープ」し続けている。度を越しており、もう止めるべきではないか。まずは時系列で簡単に紙面の見出しだけ抜粋する。

毎日新聞ロゴ、原英史氏(衆議院インターネット中継)=編集部

  • 6月11日     (1面)「国家戦略特区 政府ワーキンググループ委員関連会社 提案者から指導料200万円、会食も」「原氏の顔写真付きの関係図」
  • 6月12日     (1面)「政府、特区審査開催伏せる WG委員関与HPと答弁書」、(29面)「透明性 また揺らぐ 特区審査隠し」「真珠販売会社『原氏から台本、NGワード』」
  • 6月13日     (1面)「内閣府『非公式会合と推測』特区審査隠し『記録なし』」、(5面)「野党『特区』聞き取りへ陸上イージスには調査団 5党派合同」
  • 6月14日     (1面)「『隠し審査』で調査要求 特区WG、水産庁に」、(4面)「『焦点』特区審査隠し 『開催の記録ない』はずが証拠の山」「政府の釈明 破綻寸前」「野党『原氏関与』追求」

このスクープは筋も質も悪い。最早「報道の暴力」の水準ではないか。

ストーリーの焦点が移動

6月11日、以下の「疑惑」を指摘してキャンペーンが始まった。

【論点1】WG原氏が立場を利用して見返り200万円と食事の供応を得ていた

【論点2】原氏は公務員ではないが、もし公務員だったら収賄罪にも該当する悪い行為だ

【論点3】WGは「審査」する立場なのに審査前に受ける側へグレーな助言をした

しかし当日即座に原氏から明確な反論を受けて旗色が悪くなると、翌12日、別の論点を続報した。

【論点4】政府は特区審査隠しをした。不透明だ。

【論点3の証拠】真珠販売会社は『原氏から台本、NGワード』等グレーな指導を受けた

原氏はこれらにも「毎日新聞記事への反論②」(アゴラ12日)と当日再反論した。これを受けて13日と続く14日、毎日新聞は、自らの過去報道の確からしさを高めるべく次のテーマを続報した。

【論点4の証拠】政府は「非公式な会合の可能性」を野党議員に伝えた

【論点5】野党5党派合同で「特区」疑惑の追及が始まった

【論点5補足】野党による追及が本格化した

毎日新聞にとって、報道が事実かどうかは重要ではない

一連の報道は多くの読者側には奇異な印象を与えているが、新聞側にとっては合理的な行動なのだと推測する。つまり、原氏は政府叩きの手段(入り口)に過ぎず、最終目的は現政権のイメージ低下とそれによる目前に迫った選挙でのダメージである。

仮に原氏からの訴訟が提起され、誤報として名誉毀損が認定されるとしても結審は数年後であり、賠償額はたかだか100万円前後である。得る利得と失う損失を合算すれば、利得の方が遥かに大きいのであろう。結局、新聞にとっては、報道内容が事実かどうかは重要でなく、「安倍政権は悪い奴らだ」という印象を付けられるかどうかこそが大切なのであろう。

他紙は沈黙

従来の報道キャンペーンでは、一紙が単独スクープすると、他紙も後追いで報道して大いに盛り上げることが通例だった。しかし今回は他紙が全く報道していない。これは、報道内容の信憑性がかなり低いことを裏付けている現象ではないか。

野党の追及という最低限度の広がりで幕引きか

他紙の追随はないが、少なくとも野党は合同で本件の聞き取り調査を始めた。一般的に報道機関側としては「火付け役」を担った場合には、他紙の後追いは欲しいところだ。更に捜査機関が動けば最高で、政権批難報道も効果甚大となる。しかし現時点では、それらの動きは少なくとも公には見られない。今後の推移に留意する必要はあるが、現段階では野党が動いたことで一定程度の戦果とするのではないか。仮に野党による何等かの「手柄」が続けば、報道も一層あおって行くのだろう。

原氏への個人攻撃的報道は実質的には「私刑」だ

6月14日現在、原英史氏には何ら批難に値する行為は認められない。捜査が行われているとも考えられず、金銭の受領も全く証明されていない。新聞社とは捜査機関でも裁判所でもない。一報道機関である毎日新聞が、確証もなく疑惑報道を連日一面で行うことは、「報道」という強大な影響力を持つ企業による「私刑」ではないか。報道の暴力は、一個人に対して行われるとき、深刻な精神攻撃となる。報道され晒されることへの恐怖や恥辱は、時に人の心に大きな傷を与え得る。

毎日新聞は筋も質も悪いキャンペーンはやめた方がよい

確かに、言論の自由も報道の自由も極めて重要だ。しかし公共の利益に相反し、不当に個人の心身を傷つけ、個人の社会的名誉の毀損や損失を無制限に発生させて良いものでもない。

事実はこれから判明するのだろうが、今回のキャンペーンは度を越してないか。逆に毎日新聞への印象が悪化する効果の方が大きいと感じる。

原氏は14日夕、内容証明を毎日新聞側に送ったことを明らかにしたが、毎日新聞は、速やかにキャンペーンをお止めになるべきだ。

田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。