骨太の方針2019:NPO・復興・防災の視点から

今年度の骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2019)の原案が、11日、経済財政諮問会議に提示されました。

この「骨太の方針」に沿って、2020年度の予算や制度改正が議論されることになります。昨年は「外国人労働者の受入」が目玉でした。今年は「就職氷河期世代への対応」が柱となっています。

ここで、私が関わる「NPO」「復興」「防災」について言及しておきたいと思います。

1.NPO  ~ コレクティブインパクト

「SDGs実現を含む社会的課題の解決に寄与する公益活動に民間の資金、人材を広く呼び込むよう、社会的ファイナンスの活用を促進する。このため、休眠預金等活用制度に基づき民間公益活動を支援する取組が2019年度中に始まることに伴い、その着実な進展を図る。情報発信を強化し、同制度への幅広い理解を促す。また、成果連動型民間委託契約方式の普及促進を図るとともに、地域の社会的課題に民間の立場から取り組む社会的事業の創出環境の整備を進める。特定非営利活動促進法が施行され20年を経たことに伴う課題を踏まえ、NPO法人の活動の活性化に向けた環境整備を図るとともに、寄附の促進に向けた取組を進めるほか、ボランティア参加者の拡大や官民連携による協働(コレクティブインパクト)の促進等による多様な担い手の参画を促進し、これらを通じ、共助社会の実現を図る」(p45)

「社会的ファイナンス」「休眠預金」「ソーシャルインパクトボンド」そして「コレクティブインパクト」がキーワードとして含まれています。

これらは、鈴木馨祐財務副大臣が中心となり進める超党派勉強会である「NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会」での検討が色濃く反映されています。新公益連盟としてこうした方向性を加速させる政策提言を続けるとともに、現場での実践事例をひとつひとつ積み重ねる考えです。

2.復興  ~ ポスト復興庁

「東北の復興なくして、日本の再生なし。東日本大震災からの復興・再生は、内閣の最重要課題である。 (中略)復興・創生期間後の適切な対応を図るため、年内にその基本方針を定めるとともに、 復興庁の後継組織として、復興庁と同じような司令塔として各省庁の縦割りを排し、政治の責任とリーダーシップの下で東日本大震災からの復興を成し遂げるための組織を置 くこととする。 ラグビーワールドカップ 2019 や 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 を通じて、 世界中から寄せられた支援に対する感謝を伝え、復興しつつある被災地の姿や魅力を国内外に積極的に発信する」(p5)

本文p5-6に含まれており、引き続き現政権の柱として復興は位置づけられています。特に復興庁が役割を終える2020年より先の復興についての検討が今年の大きな課題です。まだ復興がはじまったばかりと言える福島はもとより、岩手・宮城でも何を復興事業として継続させるべきかの議論が、年末にむけた論点となります。

ちょうど一昨日、復興に関わる民間団体で、震災から10年を機に何を検討し、何を発信すべきか議論しました。民間の立場からも、復興のこれまでとこれからを、提言しつづけるべきだと考えています。

3. 防災  ~ ソフト防災の強化

「国民の生命と財産を守るため、近年の災害の発生状況や気候変動の影響を踏まえ、体制整備に努めつつ、ハード・ソフト両面において防災・減災対策、国土強靱化の取組を進める。(中略) 国及び地方自治体の災害救助体制や消防団を中核とした地域防災力の充実強化、 行政・NPO・ボランティア等の三者連携の強化及びコーディネート人材の育成、自主防災組織等の育成・教育訓練、防災拠点等となる学校等公共施設等の耐震化などの防災・ 避難所機能強化、新技術を活用した河川管理の高度化・避難の迅速化等により、地域の災害対応力の向上を図る」(p43)

方針全般では国土強靭化に代表される、ハード面での防災施策が中心です。が、ソフト防災についての言及も多数含まれるようになってきました。

RCFでは「災害時の情報面での強化」「NPO・ボランティアとの連携」を訴えてきましたが、内閣府防災中心に、理解を深めてきて頂いたように思います。引き続き、「災害関連死の抑制」が国の方針に入ってくるように働きかけ続けたいと考えます。

NPOこそ、政府方針に対する提言を

2018年の骨太の方針で「コレクティブインパクト」のキーワードが入りました。それ以来、「コスト重視の業務委託型」ではなく、対等に事業を形成する「社会的成果重視のパートナーシップ型」こそが官民連携の本質であることが、省庁だけでなく地方自治体でも理解が進んだと感じています。骨太の方針に文言が入ることで、行政・メディアを通じて、一挙に公益性を帯びていくことになります。

所轄省庁、与党、そして政治家一人一人への提言と、全てパッケージで行わないと骨太の方針に言葉が入ることはかないません。また、相当の公益性・代表性が必要になりますから、政策への深い理解と、また専門性を代表する立場からの提言が求められます。

現場を鋭く理解し、当事者と深い関係をもち、幅広いステークホルダーとのつながりを持ち、何よりも目的を公益におくNPOは、もっとこうした政府方針への提言を果敢に進めてほしいと考えます。RCFも引き続きがんばります。


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2019年6月14日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。