一般的に「理想の上司イメージ」とはどのようなタイプでしょうか?おそらく、年代に関係なく、「面倒見がよいこと」「責任感が強いこと」が挙げられるはずです。
一方で、面倒見が悪く責任感に乏しい上司は社内でも嫌われる存在です。これは、IT系サービス事業を展開する「ブラックネットワークス社」の事例です。
ある日、営業部の野口さんが上司の松山課長(どちらも仮名)に「最近、売上が落ちているので新規開拓に注力したほうがいいと思います!」と提案しました。
松山課長は「既存顧客を重視すべき。まずは顧客のメンテナンスが大切。新規開拓したいなら君1人でやればいいじゃないか!」と返されてしまいます。
そんなとき、社長から全社にあてて号令がかかりました。内容は「売上が減少しているので、新規開拓を優先すべき」というもの。新規開拓の場合、売上に応じてインセンティブが支払われることも発表されました。
松山課長はメンバーを集めました。「お前たち、社長のお言葉を聞いたか!ピンチはチャンスだ!夢に日付をいれろ!途中で諦めるな!夢にときめけ!明日にきらめけ!」。まるで、夕焼け番長さながら、青春漫画のようなセリフを繰り返すばかりでした。
野口さんのモチベーションは急速に下がっていきます。このような上司の特徴に「裏切り」があります。部下に責任を押しつける上司です。ドラマでは、部下の責任を被って上層部に談判し経営陣を動かすようなシーンがありますが、それはドラマの話です。
通常は、部下の責任を被って上に談判するような人は存在しません。そんなことをやっていたら、社内で生きていくことができないからです。
上司は部下のためには体を張りません。上司がズルイという問題ではなく、誰もがそうだということです。だから、部下も賢くならなければいけません。会社人生を安定したものにして過ごすために、会社のルールを覚えることです。
さて、先ほどのケースの続きです。野口さんが松山課長に「新規開拓で業務量が増えて、メンバーの不満が噴出している」ことを報告しました。松山課長も「わかった、部長に掛け合ってみる」との返事です。
ここでは念押しが必要です。松山課長に「部長は首をたてに振ってくれますでしょうか?信頼の厚い課長からの話ですから大丈夫とは思いますが気になります。課長が難しいと思うなら辞めておきましょうか?」とさりげなく自尊心をくすぐります。
「とりあえず部長に話してみるよ」。こうなったら、松山課長は自らの意見として部長に話さなくてはいけません。
部下の話を部長に話すのとは事情が変わってきます。責任感に乏しい上司をコントロールするには予防線を張らなくてはいけません。
<参考書籍>
『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)
尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)