香港で200万人を超えるデモが連日行われています。
香港ではこれまでも「民主化を求めるデモ」というより、「今の民主主義を守るためのデモ」がしばしば行われていましたが、今回はデモ参加者は1997年の中国返還以来で最大規模でした。
香港の総人口(748万人)の4分の1を超える人たちが参加をした今回のデモは、刑事犯罪容疑者を中国に引き渡す「逃亡犯条例」に反対することが目的でした。
あまりにも凄まじい反対の波に押されて、香港特別区行政長官の林鄭月娥 (Carrie Lam)
氏は先週、立法会での審議を中断し、延期すると発表しました。そして昨日18日には内輪の席で、「再び提起しない」、要は撤回とも取れる発言をしたそうです。
香港を歴史的に簡単に説明すると、アヘン戦争中の1841年に占領、その後1842年に南京条約によりイギリスに永久割譲され、1843年に植民地としてのイギリス統治が始まりました。その後イギリス統治下で民主主義の確立、また経済の自由を得て1997年7月1日にイギリスから中国に主権移譲されました。要は返還です。その返還時にイギリスと中国で合意され、向こう50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を維持することが約束され、外交と国防をのぞき、「高度な自治」が認められました。すなわち2046年までは約束された50年に当たるわけです。
ところが、「中国からの独立」を主張している立法会の議員が当選したにもかかわらず、その資格を剥奪されるなど、いわば言論の自由がない、人権がない状態に、返還後20年でなり始めているわけです。
要するに一国二制度(中国がホンコン,マカオの主権を回復し,台湾との統一を実現するために 1978年末に打出した統一方針)と言いながら、中国は香港を完全に中国の支配下に置く方向に舵を切っている。
特に今回の逃亡犯条例には市民が危機感を強めています。それはなぜかというと、香港市民からすれば、中国に連れて行かれたら、まともな裁判が受けられないとわかっているからです。
これよくわかりますね。
日本人もすでに経験しています。
平成22年に尖閣諸島沖の領海内で中国漁船が海上保安庁の船に体当たりをし、船長が公務執行妨害で逮捕しました。その直後、中国は無実の日本人をスパイ容疑で中国国内で四人も逮捕しました。
身柄を拘束されるのも中国政府の腹一つ、そして裁判では何を主張しても認められない。これだと、香港の人達も連れていかれた最後ということであり、香港にはイギリス時代に民主的な裁判の仕組みが確立されていますので、なおのこと反対です。
さあこれからどうなるのか。
今月末、大阪で開かれるG20国際会議の場で中国はこのことを言われたくないから一度引っ込めたという説もあります。他人事ではないと見ているのは台湾でしょう。台湾に対して中国は一国二制度にしようと迫ってきたわけです。
はっきり言って21年後には香港も中国の一部になります。さて、今の中国のようになるのでしょうか。だとしたら、香港からも人権がなくなるでしょう。
香港市民は、中国の一部になる前にに中国が民主化することを期待していますが、今のままでは望み薄ですね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。