空幕、装備庁は合意したC-2削減をひっくり返すつもりか

パリエアショーに関する Flight Grobalの記事です。

The Kawasaki C-2 strategic transport has made its debut at Paris, appearing in the static park alongside its cousin, the P-1 maritime patrol aircraft.

The pair form the centrepiece of a major Japanese commitment to the show involving some 65 defence personnel, including Masahito Goto, a major general in the Japan Air Self Defense Force. An engineer by background, Goto is also deputy director of Tokyo’s Acquisition, Technology, and Logistics Agency.

There are eight C-2s in Japanese service, not including two prototypes developed for the programme. Eventually the JASDF could obtain up to 30 examples, if budget permits.

防衛装備庁のプロジェクト管理部、後藤雅人プロジェクト管理総括官(空将補)のコメントです。
空自の将軍としての立場なのか、装備庁のプロジェクト管理総括官として発言かは知りませんが、彼は予算が許せばC-2を30機調達したいといっています。

C-2(空自サイト)、P-1(海自サイト)=編集部

30機というのは当初の空自の目論見であり、それがその後25機に減らされて、それが最終的に22機で生産終了ということで財務省とも話がついています。それは当ブログでの「市ヶ谷の噂」でもご案内しましたが、朝日新聞でも報じられています。

C2輸送機の調達、3機減 価格高騰受け、予算735億円節減(朝日新聞)

航空自衛隊のC2輸送機について、防衛省と財務省は、調達機数を現計画の25機から22機に減らすことで合意した。C2輸送機は調達価格の高騰が問題になっており、今回の見直しで総額735億円の予算節減につながるという。

来年度から5年間に調達する装備品などを盛り込む新たな中期防衛力整備計画(中期防)
の策定にあわせ、両省が協議。18日に閣議決定した中期防では予定通り5機の調達を明
記するものの、24年度以降の調達機数は4機に減らすことになった。

正式に決定されたC-2の削減を、予算が許せば30機買いたい、というのは空自の将官兼、装備庁の高官として
それをあたかもなかったように、メディアに話すのは文民統制の面からも大変問題です。まあ例によって、防衛省記者クラブは、当局を忖度してこの問題を質すことはしないでしょう。

C-2の調達数は当初からみれば三分の二に減らされたわけです。それはP-1との共同開発、そしてコスト管理が杜撰だったからです。

C2輸送機のJV製造検討へ 防衛省、コスト管理に甘さ(朝日新聞)

防衛省は、価格が高騰を続けている国産C2輸送機について、企業共同体(JV)による製造に発注方法を改める検討に入った。すでに量産段階に入っている防衛装備品の発注方法が見直されるのは極めて異例。防衛省のコスト管理の甘さが問われるのは必至だ。防衛省幹部が27日、明らかにした。

C2の製造では、同省は川崎重工業と主契約を締結。1機あたりの価格は調達を始めた2011年度の166億円から、18年度の236億円に見積もりが跳ね上がっていた。

同省関係者によると、C2はスバルが主翼や垂直尾翼、三菱重工業が胴体の後部など複数の企業で機体各部を分担製造し、川崎重工業が最終的に機体全体を組み立てる分業制が採られており、それぞれが利益を積み上げる算定方式となっていることから「価格高騰の原因」(政府関係者)とされていた。JV方式にすれば「二重取り」は防げるとみられている。

両機の開発前から指摘しておりますが、二機種同時開発は無理がある。当時はUS-2のプロジェクトもあり、日本の航空工業界のキャパを超えていました。結果して設計や開発が手薄になって開発は難航すると。

更に申せば両機を同時に調達する予算もかかるので少数生産しか不可能になるので、調達単価も上がると申し上げてきました。まさにその通り、それ見たことかという状態になったわけです。

そして運用コストも高騰してF-35よりも高くなってしまった。

更に申せば、二機種つくると先になって次世代の設計者が大型機を開発する機会を失います。

どう考えても技本と空幕の構想力、指導力、当事者能力の欠如です。

これは国会でも追求されたしかるべきです。議論を積んで積み上げた調達計画を「軍人」が勝手に変えてしまいかねない。これは文民統制に対する挑戦です。そういうことだから装備庁も空幕もまともなコスト意識が持てないのでしょう。

また空幕はC-2削減でも何ら輸送機のポートフォリ構想を持っておりません。既存のC-1や旧式化したC-130Hが近代化もされないならば、輸送機はC-2だけになるでしょう。
わずか数トンの貨物も全部C-2で運ぶのでしょうか。

陸自の特殊作戦群は今中期防で320名から390名に増員されますが彼らの展開を助ける固定翼の特殊部隊用輸送機も存在してません。
C-2より小型の輸送機の整備は焦眉の急であり、まして当初よりも8機も減らされたならなおさらです。

空幕には当事者意識&能力が欠如しているとしかいいようがありません。

これまた何度もご案内しておりますが、空自のUH-60J改救難ヘリにしても一機23.75億円の調達予定が、蓋を開けたら。二倍以上の50億円以上となっています。前のUN-60Jですら40億円したのですがから、23.75億円で収まるはずがないのは、子供にもわかるでしょう。

子供にもわかる話が空幕には分からなかったのか?
違うでしょう。はじめからUH-60J改の採用ありきで決定したということです。

率直に申し上げれば犯罪行為である官製談合を組織ぐるみで行ったということです。
違うというのであれば空幕の当事者能力はなく、中学生以下だということです。
肩に星をつけた人たちの見識が中学生以下なんでしょうかね?

ライフ・サイクル・コストは機体調達の2倍程度になりますから、プロジェクトの予算は2倍以上にふくらむことになりました。それはその分、他の「地味」な予算が、イージス艦一隻分削られることを意味します。

当事者意識&能力の欠如です。
これを許しているのが、大臣や幕僚長に忖度して、税金の使い方について厳しい質問をしない記者クラブにも問題があります。

■本日の市ヶ谷の噂■
16式機動戦闘車は清谷信一が執拗に指摘したこともあり、本中期防調達分から乗員用クーラーが装備されるようになるとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。