山本太郎と鳩山由紀夫の“危険”な接近

新田 哲史

山本太郎氏、れいわ新選組の動向について、いよいよ大手メディアも「よもやの躍進」の可能性を視野に入れ始めたようだ。朝日新聞は23日深夜に報じた週末の世論調査で、どの政党を支持しているかの質問の選択肢に、れいわ新選組をついに入れた。現段階で政党要件がなく、2017年衆院選直前の小池新党のように野党で1、2を争う規模の見通しもない「新党」が取り上げられること自体が異例だ。

(週末は大分に遊説した山本氏:れいわ新選組 YouTubeより)

肝心の「世調デビュー」の結果は0%。しかし、比例区の投票先では社民党と並んで1ポイントを獲得した。党首の山本氏本人は東京選挙区から引き続き再選をめざす可能性が高く、同氏に匹敵するほどの著名人を候補予定者に揃えていない中では「善戦」といえる。

…と、ここまでの書きっぷりは、山本氏の親衛隊ライターの田中龍作氏のような持ち上げぶりに見紛われそうだが(苦笑)、当然ながら筆者もアゴラも山本氏のアンチである立場には変わりはない。数日前には寄付の申し出の総額が2億円に到達したとのことで(実際に入金されれば)末恐ろしいと思ったところで、今度は鳩山由紀夫氏と仲睦まじくしているシーンをネット上にアップした。


なぜか脳科学者の茂木健一郎氏が現場にいたようなのだが、茂木氏のブログによると、会食先で2人仲良く足湯を楽しんでいたという。2人がいつ会食したのかは不明だが、ブログのアップは先週金曜(21日)午前9時すぎ。その前夜のことなのだろうか。

山本氏が政治家になる前から面識

なお、この2人は今回が初対面ではない。山本氏の過去のツイッターをたどると、初めて会ったのはまだ政治家になる前の2012年6月9日、新幹線車内で居合わせた時のようだ。山本氏が原発再稼働の賛否について問いかけ、鳩山氏は「反対ですよ」と述べ、「節電はもちろん、火力(液化天然ガス)を軸に自然エネにシフトし、徐々に脱原発依存していく」と持論を述べたという。

以下、当時のやりとりをプラグインしておく。

「鳩山マネー」と中国の影に感じる杞憂

このやりとりを見る限り、お互いの第一印象は悪くなかったようだ。その後、どれほど接点があったのかは不明だが、ここにきて再会し、足湯での“混浴シーン”を公開するあたり、何らかの政治宣伝的な意図がある可能性は高い。

今ごろ自民党や情報機関関係者は分析や情報収集しているかもしれないが、鳩山氏といえばやはり豊富な資金のことを誰も想起する。民主党が一度は自民党政権を打倒して取って代われたのは、結党当時の10数億円を用立てたのをはじめ、鳩山家が拠出する「軍資金」があったからなのは公の事実だ。

当然のことながらネットでは、山本氏とれいわ新選組に鳩山氏が“出資”する可能性を想起する声が巻き起こっている。ブリジストン創業家出身で、150億の資産を持つとも言われた母親(2013年死去)から政治活動の原資となる資金を提供されていたことが問題になったのは9年前のことだった。「子分」には気前よくお金を配っていた鳩山氏。当時の赤旗によると、政権交代前年の2008年、側近議員ら21人に計5500万円の寄付をしていたことが明らかになっている。

鳩山氏の現在の所得額や資産規模は不明だが、政治家引退後の2013年以降、香港拠点のエネルギー会社から顧問料を受け取っていたことが発覚した。


また、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)の顧問に当たる「国際諮問委員会」の委員にも就任しており、鳩山氏と「チャイナマネー」の接点が近年クローズアップされている。

中国側の意図は、日本の元首相の肩書きを利用してのプレゼンス向上と見られるが、中国側がその気になって、自国に融和的な政治家を増やそうと、鳩山氏をトンネルにして間接的に資金提供する恐れが全くないと言えるだろうか。当然のことながら“寄付”された側の政治家の収支報告書には、中国側の名前が載ることはない。

中国や韓国に過剰に融和的な言動を続けている鳩山氏や、選挙前に軍資金が欲しい山本氏・れいわ新選組の置かれた状況を見ていると、安倍政権の足元にひびを入れたい中国側がよこしまなことを考えはしまいか。ついつい想起してしまう「万一」が筆者の杞憂であればよいのだが…。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」