“贅沢さ”を楽しむには才能と労力が必要である

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
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「贅沢をしてみたけど楽しめない…」という興味深いエントリーがはてなに投稿されました。今回はこのテーマについて、お話をしてみたいと思います。

梅干し太郎/写真AC(編集部)

最近、日課になっているTwitterでのつぶやきもしておきました。

「贅沢=娯楽」ではない

テレビなどでは「これがお金持ちの優雅なライフスタイルだ!」というテーマで取り上げられることがあります。年収億超え経営者や、資産数十億円超のVIPの思考、行動を1冊の本にまとめて出版した私がみて「ちょっと大げさかな」と思われるものも少なくありません。

著書:年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣“億超えマインド”で人生は劇的に変わる!

しかし、度々放送されるのを見るあたり視聴者からのウケは悪くないように思えます。

「いつかは自分もファーストクラスに乗ってみたい!」
「5つ星ホテルで贅沢をしてみたい」
「数万円くらすの懐石料理を楽しんでみたい!」

と思う人もいるのではないでしょうか?「いつかは自分も」というあこがれを現実のものにするため、ビジネスに精を出している方もいるでしょう。しかし、そんなお金持ちの優雅なライフスタイルへの憧れに、冷水を浴びせるようなエントリーがありました。

贅沢の何が面白いのか?

はてなに投稿されたエントリーのざっくりしたあらましは、次のようなものです。

投稿者は独身34歳男で、年収900万+配当収入300万。かなりの所得があるわけですが、贅沢の楽しさがわからないといいます。飛行機のファーストクラスに乗り、スイートルームに宿泊、1食20万円の懐石料理を食べるなど世間的に見て「贅」に相当するサービスを享受したいものの、「こんなもんか」と軽い失望を覚えた様子です。投稿者は嫌味や遠回しの自慢ではなく、その疑問は本物のようであれこれと試した贅沢はいずれも失望に変わっていったようです。

参考:はてな「贅沢な生活って何が楽しいの?」

投稿者は寄付をしてみたものの、次々と寄付の依頼が殺到してその対応に苦慮したといいます。金融資産は2億円を超えているといいますから、その気になれば利回りだけでも生活できてしまいそうです。

完全に経済的な縛りから開放された投稿者の悩みの本質とは、一体何でしょうか?

プロセスがなければ贅沢も楽しめないもの

テレビゲームを楽しんだ事がある方なら分かるかもしれませんが、ゲームは苦難を乗り越えていくプロセスそのものを楽しむものです。電源を入れてプレースタートの段階から、レベルが99、最強の武器と防具を装備した状態でプレーしても、何も面白くはありません。

投稿者の憂鬱は少々、この状況に酷似しているように思えます。日常的な生活は楽勝そのもので全力を出さなくてもすべて乗り越えていける、資本主義社会においての勝者なのでしょう。つまりはゲームで言うところの、レベル99の状態に近いわけです(お金持ちは上には上があるので、金額的にレベル99ではなく、生きる楽勝さという観点で)。経済的な不安や縛りがないので、金策に創意工夫を凝らす必要性もないので、必死に生きる必要性がないという、羨ましさを感じてしまうようなライフスタイルです。

お金を消費に使う楽しさとは、ひとえにそこに至るプロセスにあるように思えます。ゲームの世界でも最強の武器や防具を手に入れるまでには、大抵は強敵を倒さなければいけない設定になっている事が多いです。ほしいと思っても、簡単には手に入らないものをどう手に入れるのか?そこで巡らす創意工夫と、苦心惨憺のすえにようやく手に入れた達成感こそが、最強の武器と防具を手に入れた時の感動を大きなものにしてくれます。

ですが、苦労を伴わない大金(今回の件はどうか分かりませんが)は使う時も、そこに至るプロセスがありません。「努力していつかは年収1000万円を達成して、ファーストクラスに乗ってやる!」このような目標の元、5年、10年といったロングスパンを経て実現できたら、その感動もひとしおでしょう。しかし、労せず手に入れた大金、たとえば宝くじで当選した場合には感動もないのです。

エントリー内に相続の事が書かれているので、もしかしたら大金の大部分を相続で得たのかもしれませんね。

贅沢を楽しめる才能が存在する

世の中、どんなものにも才能があります。例外なく、贅沢を楽しむという才能もあると私は思います。

私も昔はかなり経済的に苦しい思いをしましたが、ビジネスや投資で経済的に昔に比べて余裕が生まれました。高級ホテルへのスイートルームへの宿泊や、高級食、高級ワイン、高級ブランドなど一通り試してみて分かったことがあります。それは高級さにある「特異性」を拾い上げる感受性という才能と、それを共感しあえる仲間がいなければ贅沢は楽しくないということです。

五つ星ホテルでサービスを利用した時に驚いたのは、食事をサーブする際に「お肉のお客様?お魚のお客様?」と何をオーダーしたのかを尋ねることなく、オーダーした時に誰が何を注文したのかを記憶しておき、相手に再度尋ねることなくオーダーした食事をサーブしてくれるという気遣いです。驚くことにオーダーを受けた人と、サーブする人が違ってもそれをこなしてくれる点です。初めてこれを体験した時には、一緒に入店した奥さんと「さすが5つ星ホテルは違うね!」と小さく盛り上がったことを覚えています。

人によっては「そんなものに大枚を払うのはバカバカしい」と思えるかもしれません。実際、コスパは良くないと思います。ファーストクラスも長くても10数時間、快適なシートに座ることにエコノミークラスの10倍近く支払う事になりますので、「元が取れた!」と感じることはなく、「10数時間、狭いシートに座って数十万円もらえると考えたら断然エコノミークラスの方が良いな」と思えてしまうほどです。

私は高級車に乗ってみたこともあります。確かに乗り心地は快適ですが、頻繁にガソリン補給をするのがあまりにも面倒で、最近は燃費が良いプリウスをメインに乗っています。贅沢が日常になってしまうと、不便な側面も大きいです。

しかし、それでもビジネスに取り組んでうまくいったお祝いでサービスを利用するときなどは、コスパが悪くてもファーストクラスに乗って海外へいきたいと思うものです。経済的合理性がまったくないものも、「ビジネスをあれだけ頑張ったから贅沢してみよう!」という感情的な消費もビジネスのモチベーションになり、人生においしく味付けをするスパイスになってくれます。

贅沢さを天から降って湧いたお金でこなしても、まったく楽しめるものではないでしょう。贅沢とはそれ自体がエンタメなのではなく、それを利用するに至るプロセスまで含めて「贅沢というエンタメ」なのではないでしょうか。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。