ベネッセ情報流出事件:親会社に初の賠償命令(内部統制の視点から)

ベネッセ情報流出事件については、いくつかの裁判がありますが、6月27日にベネッセ本体の賠償義務を認めた東京高裁判決が出たそうです(朝日新聞ニュースはこちら)。当判決の原審でもベネッセ本体の過失責任を認めていますが、原告には損害がないとして賠償請求は棄却されていましたね。

ベネッセ公式サイトより:編集部

情報取扱事業者に直接委託をしていたベネッセの100%子会社の過失とベネッセ本体の過失とは内容が異なるのではないか(そもそもベネッセ本体に過失を認めるのはどうなのか)・・・と、原審の報道時には疑問をもっておりましたが、どうも日経や読売のニュースを読むと、東京高裁は「ベネッセには関連会社を適切に監督する責任がある」と判示しているようです。

100%子会社とベネッセとは共同不法行為として原告に連帯責任を負うものと考えられますが、そうなりますとベネッセ本体がどのような法的根拠によって過失ありとされたのか、親会社の過失認定が、親会社取締役の情報セキュリティ体制整備義務(内部統制構築義務の一環)違反とどのような関係に立つのか、とても興味が湧いてまいりました。

奇しくも6月28日、経産省からグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針が公表されました。グループ会社の経営管理に関するガイドラインが、今後の法人や役員の法的責任にどのような影響を及ぼすのか、このような重要判決を参考にして検討したいと思います(どなたか判決文をPDFで頂戴できればありがたいのですが・・・)。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。