長島昭久さんが自民党に入党された。また、細野豪志さんも自民党への入党を目指しておられます。これを機に、日本の政治について思うところを記したいと思います。
私はかねがね日本の政治家を2つのグループに分けるとすると、それは右翼と左翼に分けるのではなく、「現実主義」と「空想主義」に分けることの方が適当だと考えています。
「空想主義」はかつては「理想主義」だったのですが、その理想について多くの人が「実現する可能性もないし、たとえ実現しても人々を幸せにはしない」ということに気が付いて離れていった後も頑なに固執している人たちを称するには「空想主義」の方が適切だと考えるからです。
過去の歴史を遡ると下記のようになると考えています。以下に示す通り、いつの時代でも「とにかく現実的に対処する」という人と「たとえ実現しなくても理想を叫ぶ」という2種類の人たちが常にいるということは、日本人の思考パターンがそうなっているからと考えています。
1.冷戦終結まで
現実主義 | とにかく政権の座にいる、資本主義、対米従属、日米安保 |
理想主義 | たとえ政権が取れなくても理想を叫ぶ、社会主義で平等で |
格差のない社会、非武装中立、護憲 | |
この当時は、「社会主義で平等で格差のない社会」も「非武装中立」も「遠い将来には実現される」と考えられていたので、「理想主義」の人たちも「高尚な理想を語る人たち」ということで尊敬されていました。一方、「現実主義」の人たちは「政権を取り続けるためなら汚いこともする人たち」ということで蔑まれていました。
2.冷戦終結から民主党政権崩壊まで
現実主義 | 自(公)政権以外は政権を担えない派 |
2大政党で政権交代は可能派(長島、細野、蓮舫) | |
空想主義 | 憲法9条を守れば戦争は起こらない派 |
社会主義が崩壊して、人々が「実現すべき理想ではない」ということに気が付いてからは、社会主義を掲げていた人たちは「現実主義/2大政党で政権交代は可能派」に転向しました。
この時代では、「2大政党で政権交代」は「いずれは実現できる」と考えられていたので、「現実主義」に属することになります。この結果、「現実主義」は「自公政権以外は政権を担えない派」と「2大政党で政権交代は可能派」の2つの派閥が存在し、「2大政党で政権交代は可能派」が徐々に勢力を伸ばして民主党政権につながったのだと思います。
これに対して、「空想主義」は「憲法9条を守れば戦争は起こらない派」だけが細々と存在していたことになります。
長島さん、細野さん、蓮舫さんは「現実主義/2大政党で政権交代は可能派」のなかで頭角を現してきた政治家ということになります。
3.民主党政権崩壊後
現実主義 | 自公政権以外は政権を担えない派のみ |
空想主義 | 2大政党で政権交代は可能派 |
憲法9条を守れば戦争は起こらない派 | |
(反原発・自然エネルギーで電力は賄える派も含む) | |
民主党政権が崩壊して、「2大政党で政権交代は可能」は空想であることが分かったので、「2大政党で政権交代は可能派」は空想主義陣営に属することとなり、現実主義の有権者の支持を失っていきます。
「2大政党で政権交代は可能派」を支持していた現実主義の有権者はさっさと「自公政権以外は政権を担えない派」に転向して、自民党に投票するようになりましたが、「2大政党で政権交代は可能」と叫んでいた政治家は簡単には転向できませんでした。
民主党政権が崩壊して7年が経ち、ようやく民主党政権の中枢にいた現実主義の長島さんや細野さんが転向することを口にできるようになったのだと思っています。また、中田宏さんのような非自民勢力で頑張っていた人も自民党から立候補するようになりました。
一方で、蓮舫さんは国籍問題での不手際から現実主義の有権者からの支持を取り付けられないと判断して、空想主義に転向することを選んだのだと考えています。
「2大政党で政権交代は可能」が空想である理由は、日本では「憲法9条改正反対、原発反対!」と叫べば、2~3割ぐらいの議席が取れるので、「2大政党で政権交代は可能」派の人たちが政権を取ろうと思えば、空想主義の人たちと組まざるを得ないからだと思っています。
空想主義の人たちと組んだ状態で現実世界の問題に対処しようとしても、常に空中分解のリスクを抱えていることになるので、腰を据えて問題に対処することができないのだと思います。民主党政権がまさしくこの状態でした。
「2大政党で政権交代は可能」が「現実的」と思われるようになるためには、空想主義の人たちが取る議席が1割以下になって、なおかつ、有権者が「民主党政権の悪夢」を忘れることが必要なので、相当先になると思われます。
私はこの際、かつて民主党にいた現実主義の政治家の皆さん(前原さん、岡田さん、野田さん、安住さん…)は、過去のことは水に流して自民党に入ってくれた方が日本のためになると考えていますが、いかがでしょうか?(現実主義という観点ではつながっているのだから…)
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井上 孝之
かつては、「現実主義/2大政党で政権交代は可能派」に属し、民主党政権崩壊後は「現実主義/自公政権以外は政権を担えない派」に転向した技術系サラリーマン。個人ブログ