G20 安倍首相の通信簿

岡本 裕明

G20が終わりました。これほどの重要会議の議長を務めた安倍首相への注目度は否が応でも高まっていました。難しいと思われた共同宣言である「大阪宣言」も盛り込みました。総括して通信簿をつけるなら私は85点を差し上げます。

集合写真撮影を終えて首脳陣を案内する安倍首相(官邸サイトより:編集部)

20か国の我儘が先鋭化する中、それをどう取りまとめるか、むしろ、19か国が安倍首相に気を遣ったようにも感じます。つまり、あしげく外遊に勤しみ、外交で必死に落としどころを求め続けてきた安倍首相への遠慮もあったかもしれません。

日本は基本的に外交姿勢はバランスを保つスタンスを取り続けてきました。理由は小国で資源もない中、敵を作らず、うまくやっていくことを至上課題してきたことがあります。時の首相によりそのバランスは多少、右寄り、左寄りの時もあります。が、安倍首相の場合、就任当時に比べて明らかに等間隔外交が強まりました。それは逆に相手との関係に厚みを増す中でどちらも立てなくてはいけない状況になるからでしょう。

その例としてプーチン大統領との首脳会談は26回目を重ねていますが、その外交成果が十分ではないのは人間関係が先に構築されてしまったからともいえます。トランプ大統領とのゴルフ外交も双方の理解度が進み、最悪のケースは避けられるものの最良のケースもあり得ないともいえるのです。

ではそれに対して辛口筋が「甘い!」「失望だ!」「あれだけ外遊しているのになぜだ!」といった声を上げるかもしれませんが、日本の立場を考えた場合、今のバランス外交がうまく機能するプラス面はマイナス面よりはるかに大きいのかもしれません。色濃い外交を将来するのであればそれはその時の首相のリーダーシップに担うものであり、安倍首相の持ち合わせた外交能力は以前にもまして角が丸くなったと言わざるを得ません。

その丸い外交の成果は二国間外交にも表れ、安倍首相を真ん中に左右にトランプ、習近平両氏が座るサミットの開会はその流れを象徴するものだったのかもしれません。注目された米中首脳会談も非常に中庸で予想通りの結果となりました。

この件に関し、一点だけコメントを付け加えるとすればトランプ大統領の強面戦術はそろそろ薬が切れそうだ、という点でしょうか?アメリカはもっと論理的戦略に立ち戻らないと中国との通商戦争は尻切れトンボか中途半端な成果に終わる可能性があります。

主要紙の社説は日経、読売、産経、毎日が米中首脳会談を取り上げ、安倍首相にスポットを当てませんでした。一方、朝日の社説は見るに耐えない安倍首相への批判というより非難に近く、まったくもって公平性を欠いている内容であります。まるで野党の遠吠えと同じであります。

マスコミが議長への敬意を一つも示さなかったことは最低のマナーすら守れなかったとも言えます。

もし私が首相で難題山積の中、こんなバランス外交を通じて将来への可能性を繋げる議長が出来たなら自分への褒美を上げたいところであります。では最後になぜ15点減点があったか、ですが、大阪宣言に数値目標を設置したのはプラごみ対策だけだった点でしょうか?もっと具体性が欲しかったというのが正直なところでした。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月30日の記事より転載させていただきました。