連携の要!休職中・入院中・収監中を無駄にしてはいけない!

当会では、相談会をせっせとやっているので、東京相談会なんかですと、全国各地から、相談者がいらっしゃるんですね。

それでよくあるパターンが、多くの家族がせっかくのチャンスタイムを、ポケ~っと無駄に過ごしちゃってるんですよ。

我々依存症者の家族のチャンスタイムとはですね、当事者が

・休職中
・入院中
・収監中(特に執行猶予が勝ち取れそうな場合)

です。

写真AC:編集部

依存症者のうち、休職や、入院や、犯罪を犯して捕まるなどの状態まで進行してしまった人は、そう簡単に自然治癒などしません。きちんと回復プログラム、そしてやめ続けていくためには最終的に自助グループに繋げなくてはなりません。けれども「否認の病」である依存症は、そう簡単には繋がらないんですよね。

で、この回復プログラムにつなぐ最大のチャンスが、上記のようなタイミングなんです。

そしてこれらタイミングは、大体3か月くらいしかありません。3か月で依存症が回復するなら、誰もこんな苦労なんかしないですよ。むしろ止めて3か月なんて一番苦しい時にまた社会復帰になってしまうんですね。

状況的にギャンブルができない状態になるので、止まることは止まりますけど、我慢していた分外に出てきたらすぐに再発しちゃいます。そんな事例を腐るほど見てきました。

そして最悪なのは、みんなこの休職、入院、収監期間が終わる頃になって、慌てて我々の相談会に来たりするんですね。
「来週出てくるんですけど、今後どうするか決めてくださいと病院に言われて~」
なんて感じなんですね。

そうではなくこれらの期間は単なる息継ぎにすぎないんですから、この間に、今後当事者と家族はどうするのか?ということを決め、その目標に向けて早めに動き出して欲しいんですね。

例えば、このまま回復施設に繋ぎたいのであれば、ご本人にあった施設を探し、そこに入寮の許可を得、本人を退院までに説得し、退院したその足で回復施設に入寮する、などの段取りをする必要があります。

また、「もう出てきても一緒に暮らすのは無理、同じことを繰り返したくない。」というご家族なら、本人が自立できるような道、一人暮らしの準備をしなくてはなりません。場合によっては、生活保護がとれるよう、行政にも掛け合わなくてはなりません。やらなければならないことは沢山あるのです。

そしてこれらのことを家族だけで対応するなどということはとても無理です。
全国にどんな支援施設があるのかもわからないでしょうし、何よりも本人を説得することが、最大のネックで難しいでしょう。

だからこそ我々のような団体があるのであって、繋がってきてくれれば、家族の支援と動くことができます。

病院のワーカーさん、主治医の先生、当事者、家族と私で、いわゆるオープンダイアローグのようなやり方で、今後について決めるとか、休職中なら、家族介入をするとか、収監中なら我々が面会に行って、今後について話してくるとか、そういったことができるわけです。それを「来週までです!」なんて急に言われたって、こっちのスケジュールだって確保できないです。

病院や保護観察所、警察、弁護士さん、産業医先生方など関係機関の方々は、「連携」をお題目のように唱えるのではなく、こういう個々の案件に対し実践して頂けたらなと思います。

「連携」をどうやって実践するかといえば簡単なことで、まず家族を我々のような家族支援をやっている民間団体に繋ぐか、家族向け自助グループに繋いでいただければいいんですよね。

家族に今後どんな道があるのか?正しい知識と情報をレクチャーすること。
その知識と経験を持っている人たちに繋ぐこと。
その橋渡し役を、病院、警察、保護観察所、などに関わる方々にやっていただければと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト