大学入学試験改革、その英語テストについての私見

2020年に大学入試に於いてセンター試験から大学入学共通テストに制度改革されるにあたり、英語の試験も大きく変わります。今まで「読む」と「聞く」だけにフォーカスしていた試験内容が「読む、聞く、話す、書く」の4技能評価になります。

また試験も2023年までは大学入試センターが作成する試験と外部業者の英語試験の選択になり、それ以降は外部業者の英語試験となります。英語圏で仕事をする者から見たこの新制度について少し考えてみたいと思います。

まず、4技能評価になるのは大きなジャンプアップだと思います。海外に於いて今まで日本人が英語で苦労するのは「話す、書く」でした。ただ、「聞く」も正直言うとかなり難しいのは事実です。理由は英語は世界共通語と言いながら各国でかなり表現や発音が違い、日本人の若者は海外にきて「こんなのは英語じゃない」と面食らうからでしょう。

写真AC:編集部

私の初めての海外は19歳の時の英国でしたが、いわゆるブリティッシュイングリッシュなんてそれまで聞いたことがなかったため、かなり自信喪失したものです。日本でのリスニングの授業や試験はアナウンサーのようなきれいな発音のアメリカンイングリッシュなのでそれ以外の音は異音に聞こえるのです。

その後、アメリカに行ってNYで黒人の英語やアメリカ南部の「サザンアクセント」にも苦労しました。会社に入って英語研修の先生はオーストラリア人でしたのでオーストラリア英語でかなり発音が違い、やり取りがスムーズではなかったのを覚えています。それ以外にシンガポールやインド、香港、フィリピンなどの英語も違います。一種の方言のようなものでしょう。正直、こればかりは試験勉強では絶対にこなせないレベルです。

さて、その「話す、書く」ですが、これは英語だけの問題ではないと思います。「話す、書く」に共通しているのは表現力です。日本の入学試験制度の最大の問題は4択問題が多いということでした。これを全体的に改革して記述式などを増やすのが今回の目的で、英語もその一環ということになるのですが、世の中はむしろ表現を簡素化する方向にあります。

例えば人とのやり取りはスマホ経由の短文のテキストです。ツイッターもしかり。だから最近の若い人と話していると何を言っているのかわからないことがあるのです。略しすぎていたり、前後関係が理解できないケースなどがあります。逆に長くしゃべると「だから何?」と言われたりするのは聞く方も話す方も表現を求めていない時代なのかもしれません。そんな中で英語の試験は表現力を要求される「話す、書く」です。これは今の中高生にとって堪えそうな試験内容になりそうです。

「書く」に於いてはもう一つ苦労があります。私が経営する塾で見ていると子供たちの字があり得ないほどへたくそなんです。漢字なんて象形文字かと思うほど醜い!鉛筆を握って文章を書くボリュームが圧倒的に少なくなっているので指先が上手く動かないのです。変な例えですが、北米で大の大人に字を書かせたらろくな文字にならない人は結構います。それは普段、タイプしかしないのでペンで文章を書く習慣がなくなっているからでしょう。

さて、英語の試験については外部試験が選択できます。ざっくり9種類ぐらいの中から選択します。どの試験が有利かといったお受験対策の調査が進学塾あたりで行われていることでしょう。私が将来のことを考えてお勧めするのはIELTS(ブリティシュカウンシル)です。英検の資格は海外では全く通用しません。TOEICは最近、評価が落ちていますし、少なくともカナダでは大学留学や海外就職等ではオフィシャルになりくくなっています。IELTSは比較的海外での汎用性があります。

どうやったら英語がうまくなるか?これは机の上では無理です。実際の会話から学ぶしかないと思います。では流行のスカイプなど通信技術を使って画面を通してレッスンを受ける場合はどうか、といえばまだよいと思いますが、私からすれば半分。なぜなら相手方は上手ではない英語を聞こうと努力してくれるからです。こちらでは普通、そんな努力はしてもらえないから「はぁ?」と言われることもあるでしょう。

そんなこと言ったって海外に行けないよ、と言われるなら訪日外国人が3000万人も来るのだから向こうから来た人とどうにかコミュケーションをとる術を考えるのは一案ではないでしょうか?外国人向けボランティアというのもありじゃないでしょうか?そうすると京都と大阪の人の英語が急にアップするかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年7月7日の記事より転載させていただきました。