昨日、一昨日とアゴラさんに暴れているギャンブラーと、失踪しているギャンブラーについて掲載して頂きましたが、
どうせなら、「ギャンブラー対応3部作」にしようと思いたち、今日は最後の一遍、
もしも生き別れたギャンブラーが借金を残して亡くなったことが発覚したら家族は何をやるべきか?
をテーマに書きたいと思います。
実は、私自身一昨年父が亡くなり、この経験を身を持って学ぶことができました。私の父は、私がまだ2歳の頃、会社のお金を横領して会社をクビになっていており、母は一人娘の私を連れて実家に戻ってきたんですね。
それ以来、父とはおよそ40年の間音信不通でした。
もちろん慰謝料も養育費も不払いでしたが、日本ではそれでも何のお咎めもないため、父は死ぬまでギャンブルに明け暮れたようでした。
そして亡くなる6年前に、父が年金担保でお金を借り、借金生活の間生活が立ち行かなくなり、一時的に生活保護を申請したのです。その際に私に扶養の可否を問う書類が送られてきて、父との再会を果たしたのです。
ところが父は私と再会するなり、40年ぶりにあった娘に「絶対に迷惑はかけないから」と言いながら、携帯電話の番号を聞き出し、私もうっかり教えてしまったために、すぐにお金をせびられるようになりました。
そこで再び断絶したのですが、その6年後に父の訃報が何故か私に届けられたのです。
その顛末をブログに書いたところ、このブログは多くの方々に読まれ、親の死をつづったものでありながら、「すがすがしい!」とまで好評価を受けました。まだお読みになっておられない方は是非こちらもご一読下さい。
このブログに書きましたが、私の父は1400万円もの借金を残して孤独死しました。
家族相談に来られる方の中には、私の様に親がギャンブラーという方もいて、
「親が借金を残して死んだら、結局我々が被ることになる。」
と思いこみ、長年尻拭いをしている方々がいますが、決してそのようなことはありません。
どうか安心して借金の肩代わりをやめましょう。また、生き別れ音信不通のギャンブラーを思い悩むこともやめましょう。
まず、万が一なんらかの件で、生き別れたギャンブラーの件で行政から連絡が入った場合に、私のように、興味半分で反応を示すとのちのち巻き込まれたり、ギャンブラーが頼ってきたりしますから、一切無視でスル―してしまうとか、関わり合いになりたくない!と、きっぱり意志を示すことも一つの手です。
そうすると、葬儀などの心配もなく、行政が淡々粛々と無縁仏に葬ってくれます。
現代社会では、一般の人達でさえ「墓じまい」をする人が多いくらいですから、それほどお墓にこだわらない人ならこの手をお勧めします。
また、少しでも関わりを持ったために、借金があることがわかった…という私の様な場合もありますが、仲間達の話を聞くと、多くの場合「公租公課」つまり税金などの不払い、未払いがあり、それを相続人として請求され、親、兄弟が亡くなったことを知った…というケースが殆どです。
あまり一般の消費者金融が追いかけてきた!という話は聞かないので、さすがに死亡債権についてはそこまでやらないのか?と思いますが、絶対にないとは限りません。
ですが、とにかく何らかの債務を相続人として請求されたなら、慌てず騒がず、速やかに家庭裁判所に「相続放棄」の手続きをすれば、それで全て解決です。もしご兄弟やその他相続人がいる場合は、その方々にも連絡を入れ相続放棄をするように伝えましょう。
相続ですが、財産から負債を差し引いても財産が残る場合はもちろん放棄せず相続した方が良いでしょうが、
生き別れたギャンブラーの負債を請求される位ですから、まず財産など残っているはずもないので、さっさと手続きした方が良いです。
というのもこの相続放棄は「亡くなったことを知ってから3カ月以内」に手続きをすることを民法で定められているからです。
しかもこの相続放棄は、拍子抜けするほど簡単です。
弁護士などの専門家に頼む必要もありません。
自分で書いて、戸籍などの必要書類と手数料分の収入印紙を用意すれば良いだけで、裁判所に行く時間がなければ郵送するだけでできてしまいます。
詳しくはこちらの家庭裁判所のHPをご覧下さい。
相続の放棄の申述(裁判所HPより)
昔は結構面倒だったようですが、債務の総額など不明でもおよその金額で大丈夫です。そして放棄の理由に「債務の超過」を選べばよいだけ。なんせ、借金の疎明資料を提出する必要すらないのです。
たった2枚の紙に簡単な内容を記載するだけ。これには私自身も本当に驚きました。有難う裁判所!と思いましたね。お陰さまで、父の死後2年たちましたが、一切何のトラブルも起きていません。
ギャンブラーの行く末を案じ、自分をすり減らしながら肩代わりを続けたり、漠然と生き別れたギャンブラーから「何か迷惑をかけられるのでは?」と怯えているご家族がおられますが、心配ご無用!私が体験済みです。そんなことに煩わされずに、自分の人生を楽しんで下さい。
ギャンブラーの責任はギャンブラー自身にあるのであって、あなたの責任でも、あなたが責任をとるべきでもありません。どうかタフラブを貫いて下さい。
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト